HSインタビュー vol.11−2: Forbes JAPAN Web編集長 谷本 有香さん 「心持ちひとつで、逆境をも楽しめる(後編)」

第11回目のゲストは、 Forbes JAPAN Web編集長 谷本 有香さん

Heading Southは、「Wardrobe designed to “move” you. 『動き出す』あなたのそばに、『感動』のいつもそばに」をブランドステートメントに、ありたい自分に向かってチャレンジするひとに寄り添い、応援する存在でいたいと願います。

自分らしさを大切に、強く美しくしなやかにチャレンジする人々の気持ちを後押しし、そんな素敵なひとが増えることを願ってお届けする「HSインタビュー」の第11回のゲストは、谷本 有香さんです。

3,000人を超える国内外のトップインタビューから時代を読む

今回のゲスト、谷本 有香さんは、経済誌Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)のWeb編集長を務める傍ら、経済ジャーナリストとして多方面でご活躍されています。以前は、日経CNBCなどで経済キャスターとしてもご活躍され、これまでに3,000人を超える国内外のトップリーダーにインタビューをされてきたご経歴の持ち主でもあります。

現在もお仕事を通じてトップリーダーとの面談が多い谷本さん。リーダーに会い続ける中で、時代を引っ張るリーダーのタイプが変わったと感じられたことから、「世界のトップリーダーに学ぶ一流の『偏愛』力」を上梓されました。

後編となる今回は、谷本さんの著書のお話や、苦しい経験から得た「逆境を楽しむ」心の持ち方などについて、お伺いしました。

今日のお話は、現在、様々な苦難に直面されている方々へ是非知っていただきたいと思いました。辛い時は、視野が狭くなり、自分の殻に閉じこもるなど、何かと近視眼的になりがちですが、視点を変えてみることの大切さや、心の持ち方ひとつで、同じ日々がこれまでとは全く異なる景色に見えることを谷本さんは実体験をもって教えてくださりました。

是非お楽しみいただけましたら幸いです。

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廣田: 谷本さんの著書「世界のトップリーダーに学ぶ 一流の『偏愛』力」を拝読したことが、谷本さんに是非お話をお伺いしたいと思うきっかけとなりました。

3,000人を超える国内外のトップリーダーに取材をされ続けている谷本さんが、時代を引っ張るリーダーのタイプが変わったと感じ、では、新しい時代のトップリーダーの共通項が何なのかを考えたときに「偏愛力」がキーワードとして挙げられ、「熱中するほど好きなことで、他社貢献できるもの」を軸に事業を展開しているという特徴があると書かれていました。

本を読ませていただいたときに、リーダーの話とされてはいるものの、これは個々人でも同じだなと思ったんですね。

組織から個の時代へと世の中が変わりつつある中で、社会に属する一人ひとりが、これまでの、have to(やらなければならない)的な働き方から、want to(やりたい)的な働き方へと変わっていっていいんだよ、という前向きなメッセージとも個人的には受け取れました。

先ず、谷本さんは、何故この本を書こうと思われたんですか?

インタビュワー廣田(左)は、淡いイエローベースのニットと同系色のレースのロングタイトスカートに、006 Giallo Limoneを合わせています。


リーダーの数が増えることは、社会や国を元気にすること

谷本さん: 仕事柄、リーダーの方にお会いする機会が頻繁にあることもあって、リーダー研究がライフワークになってるんですね。

当然、リーダーから見えてくる時代性があります。リーダーに会い続ける中で、確実にトップダウン的なカリスマリーダーが少なくなり、また求められ難くなっていること、また、面白いなぁと思う企業のトップが、必ずしも従来のリーダー然としていなかったりすることを感じていたんですね。

「今の時代性に合ったリーダーの共通項って何だろう?」と考えたときに、「偏愛性」というキーワードがしっくりきました。何かに異常に没頭するけど、他は何にもできないから任せる、みたいな。

今までのオールマイティなリーダー像ではなく、彼らのダメな部分を見ると、私たちと何ら変わらないじゃないかと。ということは、多くの人がリーダーになれるということ。

リーダーになることが必ずしも良いわけじゃないけれども、リーダーの数が増えることは、社会や国を元気にするんじゃないかなと思ったんですね。

私の中には、常に経済が根底にあって、経済がどうにか良くならないか、その中で自分が寄与できることはないかという思いがあるのですが、自分に自信を持つリーダーが増えると世の中が変わっていくんじゃないかと思って、それを伝えたいと思いました。

廣田: なるほど、興味深いですね。谷本さんは何故この変化が起きていると思われますか?

解がひとつでなくなり、自分らしくあっていい世の中へ

谷本さん: ひとつには、ニーズの多様化があるのではないでしょうか。ひとつの解が見い出せない世の中になっていますよね。少し前までは、教育も含めて、社会全体が大きな解を求め、それに向かっていたと思いますが、今は、色々な考え方があり、また企業の中でも多様な考えを増やさなきゃいけないという流れが来ている。

あなたの特性って何でしたっけ?その特性を活かせることって何でしたっけ?じゃあ、それを活かして行きましょう、という流れに変わってきていますよね。

また、最近の経営者はとにかくアートに興味があり、勉強されている方が本当に多いですが、これもまた、解がない世の中でどう答えを描くかを考える手段ですよね。ゼロからイチを創造することをアートから学びたいということ。

そして、解がないということは、自分らしくていいんだ、色々なピースがあって良いんだということ。自分のピースを活かすことで、今までの滅私奉公的な働き方ではなく、自分自身の幸せやウェル・ビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)に繋がっていいんだよ、ということですね。

廣田: まさに、個に繋がる話ですね。谷本さんは「誰もが自分の表現力を磨き、それぞれの社会の接面で社会に貢献できるようになれば、社会はより素晴らしいものになっていく」と仰っていたかと思いますが、私は、まさに!と思っていて。

このHeading Southは、ありたい自分に向かってチャレンジする人を応援することを存在意義として活動していますが、まさにそういう人が増えて欲しくて、このインタビューをやらせていただいています。お話を是非お伺いしてみたいと思ったのもそこだったので、とても嬉しいです。

日頃から、大勢のリーダーとの面談が多い谷本さん。引き出しの多さに圧倒され、夢中になってお話をお伺いしました!


解がないのが不得意な日本人

廣田: 一方で、特に日本人はひとつの解を求められる教育を受けてきたので、解がないのは得意ではないですよね。自分に何ができるのか分からなかったり、当然、経済的、組織的なしがらみやハードルもあるし、迷っている人も多いように感じています。

この状況に変化をもたらすための第一歩として、何ができるかをアドバイスいただけますか?

先ずは、ワクワクする体験を積もう!

谷本さん: そうですね。この本をお読みいただいた学生さんからも、「好きなことが見つからない」という相談をいただくことがあります。

先ず学生のうちは、誰かの夢に乗っかることでもいいので、好きなことを見つけることから始めるのが良いのではないでしょうか?

心が動く、ワクワクすることがあなたの好きなことだから、先ずはそういう経験を積もうよ!と。

次に、社会に還元できる「好き」を考えてみよう

谷本さん:  次に、社会人になって重要なことは、その好きを社会にどう還元するか。やはり「好き」だけじゃ弱いですよね。

それが乗じていくと、お金になったり、マーケットになったりすることもあると思いますが、ある種の利他性をもって、自分の「好き」が誰かの笑顔に繋がるか、どんな風にお金に繋がるかを考えていくと次に繋がりやすいですよね。

自分の好きで人を喜ばせるとか、自分が好きなことをワクワクして人に話すことで人を喜ばせるとか、自分の好きでどう社会を変えられるかという視点で考えると、偏愛性が自分のアイデンティティになったり、趣味から仕事に変わっていくんじゃないかなと思いますね。

廣田: そうですね。願わくば、好きなことを仕事にできると良いですよね。

必ずしもお金に繋がらなくとも価値は生み出せる

谷本さん: 趣味や好きなことは内なるものになりがちですが、自分が感じているそのワクワク感を外に発信するだけでも、人を幸せにすると思うんですね。必ずしもお金に繋がらなくても、仮に10人中9人が無視しても、ひとりが面白そうと思うだけでも、社会に新しい価値を形成していると思うんです。

廣田: なるほど!単なる資本主義的な「労働=報酬」という考えでなく、まさに価値観は多様化していて、自分に自信を持って好きなことを発信するだけでも、世の中にある種の価値を与えられるということですね。

ところで、谷本さんは「好き」を仕事にされていらっしゃいますし、また、「好き」を仕事にするべく努力を積み重ねられてきた方でもあると思いますが、谷本さんのお仕事に対するパッション(情熱)の源泉って何でしょうか?

美しい経済、美しい日本を創るために、何をすべきかを追求したい

谷本さん: 今まで、金融経済、資本主義のど真ん中にいて、例えば、GDPが高いなど、強い経済が良いと思って生きてきましたが、今は、美しい経済、美しい国を創ることが重要だと思っていて、そのために何をしたら良いかを追求し続けることが、私のパッションになっています。

話す・書くなど手法は違えど、伝える立場として気にしていることですね。

あと、敢えて「美しい」という形容詞を用いましたが、「真・善・美」の中で、「正しい経済」や「良い経済」という表現だと、時代によってスタンダードが変わってしまう感じがするんですね。

美しさ、即ち、美意識は、どんな時代でも変わらないなと思って。

廣田: なるほどなぁ、仰る通りですね。谷本さんは、学生時代から、国や経済に対する正義感や義憤がご自身のお仕事の軸になられているようにお見受けします。フリーランスゆえ、今後、更にどんな風にご自身の道を切り拓いていきたいのか、とても気になります!

「ブルーも大好きなカラー」と谷本さん。それぞれのカラーをじっくり見ていただけて、とても嬉しかったです。


常に成長し、それを社会に還元したい

谷本さん: そうですね、フリーランスゆえ、常に成長していないとクビになるという思いがあるんですよね。成長欲求が普通の人よりも強いか、それとも、ある種の強迫観念もあるのかもしれませんが、成長することに対する喜びが大きいんですね。それをひとつひとつ重ねていくだけで嬉しいかな・・・。

新しい人に会う、見聞きする。単に自分に含ませるだけでなく、それを良い形で外に出したり、良い形で繋げて出していくことができたらいいなと思いますね。

あと、伝えることはライフワーク的なものがありますので、良きことを世界に発信していきたいですね。世界のカンファレンスに参加した際に、日本の影響力が弱かったり、日本国内への内向きな発信になりがちなのを見るにつけ、日本はもっと良い形で発信することができるんじゃないかという思いがありますね。

廣田: ここまで話をお伺いしてきて、谷本さんは努力を積み重ねて自分自身の力で切り拓かれてきた方だと思います。

今日も、ご苦労されたかつてのお話をお伺いするに、挫折されたり、落ち込んだり、辛い経験を散々されていらっしゃるのではないかと思うのですが、そういったときに、どうやって乗り越えられてきたのでしょうか?

谷本さん: 実は、仕事上で挫折を味わったことはあまりないんですよね・・・。

廣田: ええっ?!相当波瀾万丈なようにもお見受けしましたが・・・。強過ぎます(笑)!

辛い経験は成功への過程としか思っていない

谷本さん: 確かに異様に前向きだとはよく言われます(笑)。辛い経験は全て成功への過程としか思ってないんですよ。フリーランスという仕事ゆえ、仕事は全て自分のコントロール下にあるから、安心できていたこともあるのかもしれませんね。

一方、母の介護をきっかけに、この世から消えてしまいたいと思った

谷本さん: ただ、プライベートにおいては、母が難病になって介護が必要になったときは、初めて、自分の世界でコントロールできないものに直面して、途方に暮れた時期がありました。介護があまりに壮絶すぎて、子供が1-2歳のかわいい盛りだったこの時期の記憶が全くないんです・・・。

正直なところ、毎日、消えてしまいたいと思って生きていました。

廣田: そんなことがおありになられたのですね。どうやって乗り越えられたのですか?

「夜と霧」に救われる

谷本さん: 結局、一番は「自分を当事者として見ない」ということでした。当時たまたま読んだヴィクトール・E・フランクルの「夜と霧」にも大きな学びがあり、救われましたね。

「夜と霧」は、ユダヤ人精神科医でもある著者が、第二次世界大戦中に自らが体験したナチス強制収容所での体験を詳細に記した一冊です。

本を通じて、当事者の立場ではなく、俯瞰し、第三者的な視点で自分の状況を理解することで、状況を冷静に判断し長期の視点で物事を捉えられること、またその重要性を学びました。

自分を俯瞰し、客観視を続けることで、気持ちが楽に

谷本さん: 母の病気を何とか治せる方法はないかと、取材と銘打ってさまざまな研究所に聞きに行ったりしました。ただ、あくまでもプロの取材者として自分を捉え、介護を経験している自分や、人生のどん底はこんなふうに訪れて、そのときの気分はこんな感じなんだと、俯瞰し、客観的に観察するように意識づけするうちに、楽になっていったのです。

あと、この時期は、普通に考えれば、子育てと介護だけで手一杯だったと思うんですね。でも、それでは自分らしさがなくなると思って、北京大学の外資企業EMBA(エグゼクティブMBA)のプログラムを受講していました。

廣田: えっ、この時期に北京まで通われていたんですか!?

家族のことでどんなに忙しくても、自分の軸を持ちたかった

谷本さん: こんな環境下でも自分の軸を持てるんだということを証明したかったし、自分の軸を持ちたくなったんです。何か自分らしいこと、継続できることはないかと考えたときに、「そういえば、私、中国に行ってみたかったんだ」と。

北京には、毎月3日間滞在すればプログラムを修了することができたので、1年間通い続けました。資格が欲しかったというよりは、中国への興味や自分の軸を持ちたかった気持ちにちょうど合ったプログラムだったんです。

廣田: 谷本さんの向上心の高さやチャレンジ精神は、ずば抜けたものがありますね。この一連の経験から学ばれたことはございますか?

谷本さんのお話は、学びが多いのはもちろんのこと、私自身、視野が狭くなっていたことに気付かされ、心を整えることができました。本当に感謝です。


一度きりの人生だから、喜びも哀しみも味わい尽くして死んでやる

谷本さん: 介護での経験は、私のその後の人生に活かされてますね。第三者的に俯瞰できるようになって、苦しみを含めて楽しんでいる自分がいます。

「人生のドラマを描いたときに、ずっと順風満帆で面白い?」と。

一度きりの人生なんだから、喜びも哀しみも味わい尽くして死んでやるという思いがありますね。

廣田: いやー、本当に潔くて、勇気をいただきますね!

正直、現在のようなコロナ禍の環境下だと、私自身もしんどく思うことが多くありますが、このお話は非常に参考になりましたし、確かに、視点を変えてみると、かなり気持ちが楽になる実感がありますね。

谷本さん: それは良かったです!

廣田: 最後に、当インタビューは、ありたい自分に向かってチャレンジする人が増えて欲しい、また、チャレンジする人、したい人の背中を押して差し上げられることを願って実施させていただいておりますが、谷本さんのようにチャレンジしたいけれども、踏み出せない人、何をやりたいか分からず模索中の方への、アドバイスやメッセージをお願いします。

経済は「気」から。ワクワクをたくさん作ることで、経済は上がる

谷本さん: チャレンジって怖いと思ってしまう気持ちも分かりますね。日本人って、多分そういうDNAが仕組まれているからこそ、リスクを回避し、日本は安定した国を作れたんだと思います。

でも、「あなた、それで楽しいですか?」と、私は問いたい。

私は、経済を良くすることをずっと考えてきました。10数年間、キャスターをしながらカメラの前で企業や経済の分析を続ける中で、最後の方はワクワクしない自分がいました。

それは何故かというと、企業がワクワクすることを出して来なくなったんですよね。業績計画が未達でもいいから、ワクワクすることを出して欲しいと思った。それが、キャスターから足を洗おうと思った理由の一つでもあります。

景気は「気」ですよね。気持ちが動くと、経済は上がる。

あなたがワクワクすることをやればいいじゃない。怖いけど、チャレンジして、ワクワクするものを見つけることが重要ですよね。

廣田: 全く同感です!

今日のお話は、現在、様々な苦難に直面されている方々へ是非知っていただきたいと思いました。

辛い時は、視野が狭くなり、自分の殻に閉じこもるなど、何かと近視眼的になりがちですが、視点を変えてみることの大切さや、心の持ち方ひとつで、同じ日々がこれまでとは全く異なる景色に見えることを谷本さんは実体験をもって教えてくださったと思います。

今日は、谷本さんのこれまでのお話を色々とご共有くださり本当にありがとうございました!




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【プロフィール】

谷本 有香(たにもと ゆか)

Forbes JAPAN Web編集部 編集長/経済ジャーナリスト

山一證券、 Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、 2004年に米国でMBAを取得。 その後、 日経CNBCキャスター、 同社初の女性コメンテーターとして従事。 これまでに、 トニー・ブレア元英首相、 アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアック、 ハワード・シュルツ スターバックス創業者はじめ、 3,000人を超える世界のVIPにインタビューした実績有。

また、 これまで、 MX「モーニングCROSS」、TBS「ビビット」、 テレビ朝日「サンデースクランブル」、 毎日放送「ミント!」他、 フジテレビ「ユアタイム」、 Abema TV「AbemaPrime」等、 多数の報道番組にコメンテーター出演。 現在、 経済系シンポジウムのモデレーター、 政府系スタートアップコンテストやオープンイノベーション大賞の審査員、 企業役員・アドバイザーとしても活動。 2016年2月より『フォーブスジャパン』に参画。

著書は「アクティブリスニング なぜかうまくいく人の「聞く」技術」(ダイヤモンド社)、 「世界トップリーダー1000人が実践する時間術」(KADOKAWA/中経出版)、 「何もしなくても人がついてくるリーダーの習慣」(SBクリエイティブ)、 「世界のトップリーダーに学ぶ一流の『偏愛』力」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。