HSインタビュー vol.12−2: 西 ゆり子さん(スタイリスト)「ファッションで人生を輝かせる(後編)」

第12回目のゲストは、スタイリスト 西 ゆり子さん

Heading Southは、ありたい自分に向かってチャレンジするひとに寄り添い、応援したいとの思いを軸に活動をしています。

自分らしさを大切に、強く美しくしなやかにチャレンジする人々の気持ちを後押しし、そんな素敵なひとが増えることを願ってお届けする「HSインタビュー」の第12回のゲストは、西 ゆり子さんです。

手掛けたドラマは200本超。スタイリストの草分け的存在

西さんは、テレビ業界におけるスタイリストの先駆者。現在は、テレビドラマや映画などの映像作品を中心に活躍されています。

洋服を見せることを主な目的とする雑誌のスタイリングと違って、テレビドラマでは、役者さん達が華やかな衣装を身に纏い役を演じます。

登場人物のスタイリングプランの作成や、シーンごとの衣装設定など、ドラマに関わるあらゆるスタイリングを任され、ファッションで役柄や人間性を鮮明に表現するのがドラマスタイリストの仕事。そして、西さんは、まさにこの仕事の草分け的存在でもあります。

西さんがこれまで手掛けられたドラマは200本以上。テレビドラマをご覧になる方であれば、必ずどこかで西さんが携わったスタイリングを見ていらっしゃると思います。

後編となる今回は、西さんが近年、新たなチャレンジとして手掛けられる一般向けスタイリングレッスンへの思いや、還暦を迎え、自分の人生をどう生きるかで悩まれたお話などについてもお伺いしました。

70歳を超えて、今が一番解放され、自由でパワフルだと仰る西さん。本当に素敵だと思いました。

是非お楽しみいただけましたら幸いです。

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廣田:
これまでのお話をお伺いして、西さんは、人に興味があるからこそ、役柄の個性をファッションやスタイリングを介して引き出すことに長けていらっしゃるのだと感じています。

そんな西さんが、女優さんだけでなく、一般の方へのパーソナルスタイリングも手掛けていらっしゃると聞き、大変興味深く思いました。

一般の方のスタイリングも手掛けようと思われたきっかけや背景にある思いをお伺いできますか?


最初は暗中模索だったパーソナルスタイリング

西さん: これまでは、テレビドラマなどで俳優中心に仕事をやってきましたが、一般の方からご依頼があって、お付き合いで1−2回、個人向けのスタイリングをお受けしたことがあったんです。ただ、最初の頃は暗中模索でした。

というのも、ドラマには台本があって、物語があって、登場人物のキャラクターなどの設定があります。それらを把握して、ファッションで役柄を表現すればいいのですが、一般の方の生い立ちや人間性は台本がある訳ではないので、どうやって似合う服を見つければいいのか、ピンとこなかったのです。

それから……、やっぱり女優のオーラってものすごいんですね。そのオーラに洋服のパワーが掛け合わさると、まさに個性が華咲くのです。当たり前ですが、普通の人にはそこまでのオーラはなかなかないわけでして……。

例えば、ベテランの女優にファストファッションの流行服を持っていくと、女優のパワーに負けて、服が貧弱に見えてしまったりもします。一方、若いアイドルにハイブランドの服を持っていっても、洋服に負けてしまったりすることもあります。

プロのスタイリングは、その人が持つオーラと洋服のパワーの掛け合わせが大切なんです。


オーラは生まれつきか、出てくるものなのか

西さん:  正直、最初の頃は「まぁ、いっか」と割り切って依頼を受けていましたが、そのうち、オーラって、果たして生まれつきあるのか、あとから出てくるのか、その辺を考え出したんですよね……。

廣田: それ、すごく興味深いですね(笑)。で、その結論は??

西さん:  私の結論はね、あとから出てくるの(笑)!

女優だって、全員が生まれつきオーラを持っていた訳ではないと思うの。日々、多くの人に見られたり、ステージに立ったり、緊張感を持ったり……、そうしているうちにオーラが出てくるようになったのだと思います。

一般の方のスタイリングをしてみて感じたのは、たとえ大勢の人の前に立たなくても、毎日、「どんな服を着ようかしら?」「これを着たら周りの人はどんな風に思うかしら?」「これは派手過ぎるかしら?」などなど、日々のファッションを楽しんでいるうちに、これまで似合わなかったような服が似合ってきたり、背筋が伸びてきたり、表情が明るくなったり、個性が輝き始めるんです!

どんな人の人生でも、人間性を表現したり、時には人間性を変えるのに、ファッションは効果てきめんでした。

廣田: えー、それは素晴らしいですね!西さんはどういうアドバイスをされるんですか?

西さんのお話の端々から、人が好きで、人を輝かせたいとの思いが伝わってきました。


自分で着る力を身につけられる「スタイリングレッスン」

西さん:  いわゆるパーソナルスタイリングって、スタイリストが洋服を選んであげる「一度限りの変身」というイメージがありますが、私がやっているのは「自分で洋服を着る力を身につけられる」スタイリングレッスンなんです。

和装には着付教室があり、お料理も料理教室で基礎力を学ぶことができますが、洋服は毎日着るのに、雑誌の知識や感性だけを頼りに、基礎が分からずに着ている方が多いのが現状です。

なりたい自分になるためのスタイリング術を身につけて、日々のファッションを自分で楽しめたら、考えただけで素敵じゃない?

廣田: わー、それは素敵ですね!

私自身が服好きだからこそ思うのですが、何が本当に似合うのかを自分自身で理解できている人は、意外に少ないんじゃないかと思うんですね。

それを客観的に、しかも、西さんのような人の個性や魅力をファッションを介して引き出してくれるプロフェッショナルにしっかり指導いただけるなんて!

ファッションが楽しくなってワクワクするだけじゃなくて、自信も出てくるでしょうし、人によっては、人生が変わるくらいのインパクトがありそうですね!

10年後になりたい自分の姿を想像する

西さん:  スタイリングレッスンでは、「どういう自分になりたいか」を最も大切にしています。 私たちは洋服を見せるために暮らしている訳ではなく、仕事の場でも、デートでも、パーティでも、自分を表現するために洋服を着ます。まずは「人ありき」。

これはまさに私がずっとやってきたドラマスタイリングと一緒なんです。

そして、ドラマでいう台本がないのなら、直接「なりたい自分」を問い掛けてみようと思い、レッスンを希望する方には最初に「10年後のご自身を想像したら、どんな格好をして、どんな風に生きてますか?」って問いかけから始めています。

ファッションで気持ちやオーラも変えられる

西さん:  3-4年続けてくださっている方もいらして、もう別人のように見事に変わりましたよ!ファッションやスタイリングで、こんな風に気持ちやオーラも変えられるんだと。本当にファッションは奥が深いです。

私の中では、スタイリングレッスンは、料理教室と同じだと思っているんです。豊かな食生活のために、旬の食材を選んで、それにあった調理法で、その日の気分で美味しくいただけたら、毎日を楽しく暮らせます。

三ツ星レストランで食べる非日常の外食も魅力的ですが、日常の食卓を充実させるために、料理教室に行くのは普通のこと。

洋服だって毎日着るものなのに、学ばないのはもったいない。基礎を学び、自分でコーディネートする力をつければ、その日の気分で、ファッションを心地よくワクワクして楽しめるのです。

さまざまなカラーをお試しいただきました。こちらは008 Lilla di Firenze


理想は、かかりつけ医のように、一生分のお洋服のアドバイスをしたい

西さん: 私はもちろんのこと、一緒にやっているスタッフたちも、レッスンとレッスンの合間も、その方がどうしたらもっと素敵になるんだろうとものすごく考えますし、SNSを通じて受講者と継続的に日々のファッションの意見交換もして楽しんでいます。

知り合う機会をいただいたら、理想はかかりつけ医「ホームドクター」のように、その人の一生分のお洋服のアドバイスをする「ホームスタイリスト」になれたらいいなと思いますね。

廣田: 素晴らしいですね。西さんは、本当に人に興味があって、お洋服を介して人を変えて行くことに楽しさを見出されているんですね。

西さん:  今、スタイリングレッスンにめちゃくちゃハマってるんです(笑)。

廣田: まさに、それこそが西さんのパワーの源ですね!素敵です!

先ほどオーラの話になりましたが、一般の方でも、洋服を楽しむ心を持てばオーラは出てくるというお話は、とても興味深いなと思いました。

西さんは、著書の中で、日本の女性たちが職場で身につけているキャリアファッションは、「技がなさすぎる」、「没個性」だとご指摘されていましたが、これは私も大いに同感します。

欧米諸国では、個が際立つファッションを楽しみながらお仕事をされている素敵な方が多いので、この点、是非アドバイスをいただきたいです!


毎日、自分の気持ちが上がるものを加えて、楽しむ!

西さん: 仕事は起きている時間の中で、人生の大部分を占めます。

その時間を気分があがらずに過ごしても、仕事は楽しくないし、成果も出にくいと思うんです。

そんな方には、まずは着るものから自分を変えることをお勧めします。自分の買えるものでいいから、毎日、自分の好きなもの、気分があがるものを加えて欲しいですね。

例えば、ネイルを真っ赤にしようとか、今日はインナーをフリルにしようとか、毎日、自分の気持ちが上がるものを加える努力をすると、自分の感性も磨かれるし、緊張感も出ます。また、「今日も似合うねー」って褒められようものなら、テンションは上がりますし、そして、その笑顔も仕事に向かうでしょ(笑)。

これは、仕事をしている、していないに関係なく、そういう努力をした方がハッピーだと思います。

廣田:  ありがとうございます!もっと自分の殻を破ってファッションを楽しむ方が増えてくれると嬉しいですね。

西さんのお話をお伺いしていると、ファッションやスタイリングが人に与える力は大きいと改めて感じます。一方、日本では、年々家計における衣料品の支出比率が下がっており、先進国の中でも圧倒的に低い状況です。

ただ、デフレ環境が続く中、安いものが増え物量は増えてきた傾向にあります。個人的には、良いものを長く大切に使う方が、高揚感もあるし、無駄なものを買わない分、環境への配慮にも繋がると思うのですが……。

70歳を超えて、今が一番解放され、自由でパワフルだと仰る西さん。本当に素敵です!


最高峰のものを試してみることの大切さ

西さん:  特に、最近の若い方は、「仕事服は似合わなくて当然」と思われているようにすら感じます。「あなたに本当に合うスーツを見つけること」をキャリアウーマンにはお勧めしたいです。

どれほど肌にシュッと馴染むかが分かったら、スーツの魅力に気付けると思うんですけど、ずっと馴染まない服を着ているとなかなか気付けません。

仕事服に関するスタイリングレッスンの際には、その方に最も似合うハイブランドや仕立て屋にお連れして試着していただくことがあります。もちろん、予算的にその時は買えないんだけど、自分に似合うものの「着心地」を覚えてもらいます。

高いものには高いだけの理由があるものです。機会があれば、一度最高峰のものを試着してみたら良いと思いますね。また、良い服はエイジレスのものが多く、幾つになっても着られます。

廣田: 本当にそう思います。小さなこだわりですが、私はいつも値札を見ずに、先ずは試着することにしています(笑)。

西さん: 食器でも、美術でも、芸事でも、一番いいものを見ておいたら、選びようがあると思います。

そういう風になっていかないと文化は発展していかないと思うのです。

廣田: はい。まさに仰る通りですね!同感します。

冒頭でも触れましたが、西さんのポジティブなパワーに感銘して、是非お話をお伺いしたいと思いました。今日も改めてそれを感じたのですが、いつもポジティブな西さんのパッション(情熱)の源について是非教えてください。

西さん: 実は、こんなポジティブなパワーが溢れるようになったのは、本当にこの何年かなんです。

廣田: えっ?!そうなんですか?

自分の人生をどう生きるか。還暦を機に悩んだ10年

西さん:  60歳から70歳までの10年間、実は非常に悩みました。還暦は(干支が一周することから)ゼロに戻ると言いますよね。ゼロに戻って再スタートだと思ったら、どういう風にスタートしたらいいのか、ほぼ10年くらい悩みました(笑)。

子供も巣立って、これから自分はどう生きていきたいのか、60代は自分自身の中で、非常に迷った10年でした。

廣田: どうやってそこから抜け出されたんですか?

全てを手放し、流れに任せたら、解放され自由になった

西さん: 結局、自分の中の常識と、自分が考える人生の結論という既成の価値観で凝り固まっていたと気づきました。逆に、悩まないで「手放してみよう」と思ったんです。

敢えて今後の自分を手放してみて、どこに導いてくれるかは天に任せたら、肩の力が抜けて全てが楽になったように感じました。

具体的には、スタイリストが所属する自分の会社の経営を任せて、もう一度私自身が何をしたいかを考えたんです。

まず、洋服を着ることの楽しさをもっと伝えたい。ドラマの現場にも引き続き入って、後輩たちにも伝えていきたいし、一般の方々にもそれを伝えたい。それで書籍を出したんです。

廣田: もしや、還暦前より今の方が、よりパワーが溢れる感じなんですか?

西さん:  きっと、側から見たら以前と同じに見えますけど、自分の中ではガラッと変わったと思います。より元気というよりは、本質が変わった感じ。すごく解放されて、自由になった。第3の人生じゃないけれども、70代を楽しみたいですね。

そういう歳が皆さんにも必ず来ますから、歳を重ねることを恐れずに、これからを楽しみにしてたらいいと思いますよ(笑)。

廣田: 素敵ですね。まさに私はテレビ越しに、このパワーに共感したんだと思います!

最後になりますが、西さんは幅広い年代の役者さんのスタイリングを担当されていますよね?また、今日もソックスにポイントを置いた素敵なスタイリングで、感性がとてもお若いなと思います。

純粋に、常にアップデートされているってすごいなと思うのですが、西さんは、時代感を捉えたり、感性を磨いたりなど、プロフェッショナルとして研鑽を積むために日々されていらっしゃることはあるんでしょうか?

ポジティブオーラ全開の西さん。日々楽しく過ごされているのが伝わってきて、何事も否定せず、柔軟に受け入れてみることの重要性を教えていただきました。


ミーハーであること、柔軟に受け入れてみることの重要性

西さん: 習慣で必ずやってることはないんですよ。ですが、何事にも好奇心は衰えていません。ただのミーハーとも言われますが……(笑)。でも、フットワークが軽いのは、すごく大切だと思います。

年を重ねるほど自分の人生哲学ができますし、特に、自分の人生に自信があると、そこにこだわりがちですが、意識的に軽いタッチでミーハーに振る舞っています。「へー、そんなの流行ってるんだ。ふーん」と何でも見てみる、体験してみる。

あと、何事も否定文から入らず、まずは「はい」って言ってみる。特に、60歳を過ぎたら、できるだけ「はい」って言うことにしました(笑)。

廣田:  それはすごく奥深いですね。年齢が上がると、どうしても考えが凝り固まってしまいがちですよね。西さんは「まずは何でも受け入れてみよう」というとても柔軟な姿勢がおありになるから、感覚がお若いんだと思いますし、今もなおチャレンジを続けていらっしゃいますが、本当に力むことなく楽しむことができるんでしょうね!

西さん:  そう、まずは「はい!」って言ってみると、意外に道は開けるのですよね。何事もポジティブに、否定的にならなければ、そこからチャンスが生まれたり、何かが変わっていくものです。

廣田: 私も意識して実践してみようと思います!今日はパワーいっぱいの西さんとお話しさせていただいて、お陰様で私もすっかり元気をいただきました。

本当に貴重な機会をいただきありがとうございました!





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【プロフィール】

西 ゆり子(にし ゆりこ)

スタイリスト

1950年生まれ。 1974年にスタイリストとして独立。雑誌や広告のスタイリングを手がけた後に、『 11 PM』『なるほど!ザ・ワールド』を皮切りにテレビの分野に活動を広げ、テレビ番組におけるスタイリストの草分け的存在となる。これまで担当した作品は『ギフト』『電車男』『のだめカンタービレ』『セカンドバージン』『リーガルハイ』『ファーストクラス』『家売るオンナの逆襲』『時効警察』シリーズ、『七人の秘書』など 150以上。 2020年、「日本女性放送者懇談会 50周年特別賞」を受賞。著書に『ドラマスタイリストという仕事〜ファッションで役柄をつくるプロフェッショナル〜』がある。
現在、着こなしやファッションをテーマにした社員研修や講演を行う他、これまで培ったスタイリング術を企業活動にも導入し、スタイリストの新たな領域を切り拓くことに積極的に取り組んでいる。また一般個人向けに、理論と実践で「着る力」を学べるスタイリングレッスン「 CoCo Styling Lesson」も展開。