Heading Southは、ありたい自分に向かってチャレンジするひとに寄り添い、応援したいとの思いを軸に活動をしています。
自分らしさを大切に、強く美しくしなやかにチャレンジする人々の気持ちを後押しし、そんな素敵なひとが増えることを願ってお届けする「HSインタビュー」の第18回のゲストは、村木 厚子さんです。
HSインタビュー vol.18−2: 村木 厚子さん(元厚生労働事務次官)「本当の女性活躍に必要なこと(後編)」
第18回目のゲストは、村木 厚子さん
「女性活躍」と謳われ久しいながら、伴っていない現状
昨年末、コロナ下で女性の自殺者が増えているという報道を目にしました。厚生労働省がまとめた資料を見て、2020年7月以降、女性の自殺者は急増し、特に、非雇用労働者の雇い止めによる生活困窮が自殺の一因となっているという事実を知りました。
日本における女性の労働参加率(15〜64歳)は、73%(2019年)とOECD(経済協力開発機構)加盟国平均(65%)を実は上回っているものの、その5割が非正規雇用にとどまっているという実態があります。
コロナ禍で急激な売上減少に見舞われた外食やサービス業などを中心に、企業側は非正規の雇い止めを余儀なくされた仕方のない事実はある一方で、大きな環境変化の中で、死を選ばざるを得ないほどの生活困窮に追い込まれる女性が急増した事実を知り、女性活躍が謳われて久しいものの、実態が伴っていない現状に大きな衝撃と深い悲しみの念を抱きました。
本当の女性活躍に必要なことを村木厚子さんに伺いました
今現場で何が起きていて、改めて、本当の意味での女性活躍には何が必要かについて理解を深めたいと思い、村木厚子さんにお話をお伺いする機会を頂きました。
村木さんは、厚生労働省の官僚として、女性政策に長年携わり、国家公務員の最高位職である事務次官まで勤め上げられた女性活躍の第一人者。
現在はNPOの活動を通じて生きづらさを抱える若い女性の支援もされています。郵便不正事件で冤罪に巻き込まれたことで村木さんのことを知った方も多いのではないでしょうか。
後編では、本当の意味での女性活躍を導くために必要なことをアドバイスいただきました
後編となる今回は、調査結果などから窺える現状を踏まえて、本当の意味での女性活躍を導くために必要なことについて、村木さんに質問させていただきました。
日本の労働力を支えるためにも女性が無理せず持続的に活躍できることが不可欠です。そのために必要なことを多角的な視点からアドバイスをいただきました。
女性だけでなく、男性や企業のマネジメントの方を含めて、是非幅広い方にお読みいただけましたら大変嬉しく思います。
注:自殺者数は長期では減少傾向にあったものの、女性の自殺者数は2020年7月以降上昇し10月に急増しました。男性は、もともと女性よりも自殺者数が多く全体の66%(2020年)を占めますが、2020年は、過去5年平均に対し男性が6.8%減(13,627人)だったのに対し、女性は同5.3%増(6,922人)とトレンド差が顕著でした。
村木さんは、008 Lilla di Firenze(フィッシャーズピンク)を、廣田は、003 Blu Veneziano(ブルー)をそれぞれ合わせています
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日本の女性就業率は7割と低くないが、5割を非正規が占める
廣田: 後半は、村木さんに女性活躍について、是非色々とご意見をお伺いできればと思っております。最初に、女性活躍にまつわる幾つかの事実を共有させていただいたうえで、ご質問させていただきたいと思います。
まず、3月8日付日本経済新聞朝刊に女性の賃金が男性の74%にとどまっているとの記事がありました。
日本では女性の就業率が7割と、実のところ、他の先進国に比べ決して低くはないものの、非正規雇用比率が5割を占めること、また、正規雇用においては、報酬が比較的高額な管理職や専門職の割合が低いことが、賃金格差を生んでいるとの内容でした。
就職時は男女差はないが、30代で女性の非正規が急増
廣田: さらに、マイナビ・キャリアリサーチラボの調査結果によると、20代における正社員比率は実は男女変わらないものの、30代になると、女性の正社員から非正規への移行が急に増加する傾向にあるとのこと。
その要因として、第1子が4~6歳で正社員で働いている女性の割合が減り、7~9歳で非正規雇用で働く女性の割合が増加することが挙げられています。また、30代女性は、働いていた日も「家事を8時間以上していた」が1割以上を占めるそうです。
データから垣間見える「物理的な時間の両立の難しさ」と「心理的な負担」
廣田: これらから見えてくる実態として、「物理的な時間の両立の難しさ」と「心理的な負担」の両面があるように感じられます。
「心理的な負担」については、保育園のときは比較的遅くまで預かってもらえていたのが、小学生になると学童クラブでのお迎え時間が早くなるなどで、子供を預けていることに対する罪悪感や、早く仕事を上がる必要があることで、職場へ迷惑を掛ける申し訳なさを感じるお母さんが多いのではないかと想像します。
加えて、内閣府の調査によると、日本人女性の6割以上が自身の家事・育児負担を減らすためにベビーシッターや家事代行サービスを使うことに抵抗があるとのこと。
家事・育児・仕事、全部頑張ろうとしてしまう日本人女性
廣田: 日本の女性は世界一睡眠時間が短いなどの調査もありますが、仕事をするようになっても、家事・育児は女性がやらねばという思考が根強く、子育ても、家事も、お仕事も全部頑張ろうとした結果、限界を感じて非正規雇用を選ばれているのではないかと想像します。
翻って、村木さんは、育児休業制度もない時代ながら、保育ママを活用されて、バリバリとお仕事を両立されていたとお伺いしました。
次は、普段は絶対に選ばないというフィッシャーズピンクにトライ!
先輩方は完璧を目指さず人に頼ることで見事両立されていた
廣田: さらに、当インタビューのゲストの皆さんにも子育てとお仕事の両立についてお話をお伺いする機会が度々ありますが、両立されている方は、良い意味で完璧を目指さずに人に頼ることでうまく乗り切られているのが共通しています。
前置きが長くなりましたが、まず、この現状や、村木さんご自身のご経験を踏まえて、女性が子育てを両立しながらお仕事を頑張るためのアドバイスやエールを頂けますでしょうか。
社会全体の正社員の働き方改革が、まずもっての必要条件
村木さん: 先ず、社会全体としてすごく大切なのは、正社員の働き方改革が必要条件だと思っているんです。それによって、女性も労働時間ゆえに非正規労働を選ばずに済むし、夫の家事育児時間も増えるし、女性自身も家庭生活との両立が楽になる。
一人ひとりが意識して、この国の最大課題だと思って取り組むのが第一だと思うのです。
「お金で時間を買う」発想の転換を推奨
村木さん: そのうえで、女性が仕事で活躍するという点で言えば、ひとつは、「人に代替して家事をやってもらう」と考える人が多いと思うんだけれども、ちょっと考え方を変えたほうがいいと思っていて……。
「お金で時間を買うんだ」と発想を転換した方がいいと思うんです。
買った時間で、子供が記憶に残ることを優先的にする
村木さん: 子育てを考えると、子供が小さければ小さいほど、子供のために大人が時間を費やすことは大切です。お金で時間を買って、家事の中でも子供が記憶に残ることを選んでやることはとても大切。
記憶に残らないこと、例えば、お母さんが一生懸命洗濯機を回していたって、子供は何も思わない(笑)。そういうものは、機械や外部サービスにお願いして、「お母さん、お父さんとこれをした。どこへ行った」という思い出をしっかり作ってあげると、後々に子供は、「自分は愛されて育った」と思えると思うのです。
子供にとって、自分のストーリーはとても大切なので、それを意識して作ってあげることが大事じゃないかなと思います。
せっかくいい仕事をしてお金があるんだったら、そのお金を使って時間を買って、仕事時間を確保し、子供と何かを一緒にできる時間を確保すること。それでいいんじゃないかなと思います。
「時間はお金で買おう」が村木さんご夫婦の合言葉だった
廣田: 村木さんは実際、ご自身の年収がほぼ消えてしまうくらいの金額を子育てに充てていたと著書にも書かれていましたものね!
村木さん: そうですね。でも、共働きだったし、そんなに経費が掛かるのは子供が小さいときだけだから、「時間はお金で買おう」が夫婦の合言葉で、あまり気にしていませんでしたね。
廣田: 職場で同期のご主人との協力体制も本当に素晴らしいなと思いました!
普段色物をお召しにならない村木さんも「意外にいいかも!」と。お似合いです!
立ちはだかる「小1の壁」
廣田: 次に、先ほどの調査結果からも、「小1の壁(子どもを保育園に預けていた頃と比べて、仕事と家事・育児との両立が難しくなること)」が、非正規雇用への移行に繋がる一因となっているのではないかと推測します。
保育所は国として注力されてきて、だいぶ状況が改善されたかと存じますが、小1の壁を制度面で改善できる可能性はあるのでしょうか?
支援サービスの充実も必要だが、働き方の意識改革が必須
村木さん: そうですね。保育所の方が優先度が高かったんですよね。財源と人材確保が問題ですが、保育の方はかなり改善してきたので、段々と学童クラブにも財源が行くようになってきてはいます。
あとは、繰り返しになりますが、早く親が帰れるようにすることも重要。やはり根底にある問題はそれで、両方から攻めないとダメなんじゃないかと思っています。
コロナ下で在宅勤務が広がったので、環境的には悪くないですよね。「お父さんもお母さんも、家庭も大事にするのがあたりまえ」という働き方に社会全体で持っていくことを意識しながら、支援サービスも充実されないといけない。
特殊職業じゃなかったら、お父さんもお母さんも家で子供と一緒に夕ご飯を食べるのがあたりまえ。それが実現できない会社っておかしいよね、っていう空気感に持っていかないとなかなか解決しないですね。海外ではできていることだから、できないことはないと思うんですよね。
廣田: うーん、確かに……。まずは、根本原因を見直すということですね。
働かないことを促しているように感じる日本の育休制度
廣田: もうひとつ、制度面でお伺いしたいことがございます。今、会社に育児休業中の女性社員がいます。彼女の復帰を目前に控え、感じたことがありまして……。
今の育児休業制度は本当に手厚いと思います。その一方で、例えば、育児休業中に就業した場合、就業日数が10日を超えて、かつ就業時間が80時間を超えるときには給付金が支給されない取り決めや、支払われた賃金が月額賃金の13%以上80%未満の場合は、月額賃金の8掛けの金額と賃金の差額のみ支給されるなどの取り決めがあるかと思います。
失礼な物言いとなりますが、どうも、これが育休中の女性が早期に復帰しづらくなることを促している感じがありまして……。
雇用主も働く人も、働くと「損をした」と感じてしまう…
廣田: 人間の心理として、国が支払ってくれるはずの給付金が働くと減ってしまう、なくなってしまうとなると、本人も働くインセンティブが減ってしまいます。
また、雇用主も、特に、中小企業の経営者などは、働いてもらっても、国が支払ってくれるはずの賃金を会社が負担する必要があるので、わざわざ働いてもらうインセンティブが減ると思うんですね。
ただ、当人の今後の職場における成長を考えると、早く戻ってきてくれた方が良いとは思う。実際に、育休をフルに取得して、その後、復帰のハードルが上がってしまう実態があるように思うのです。
「お父さんもお母さんも、家庭も大事にするのがあたりまえ」という働き方に社会全体で持っていくことが必要、と村木さん
給付金を早期復帰支援のために使う選択肢の可能性は?
廣田: 少数意見かもしれませんが、もし私が子供を授かったら、おそらく早めに復帰することを選ぶと思います。
個人的には、この給付金をできたら、ベビーシッター代とか、自宅でも仕事ができるよう設備投資に回すとか、早く復帰したら給付金がもらえないのではなくて、何か別の使い方をさせていただく選択肢を設けてもらえないものかなぁ……と思ってしまいます。
是非、制度を作る側にいらっしゃった村木さんのご意見をお伺いできたら嬉しいのですが……。
時代背景から休ませる方を優先した現行制度
村木さん: そうですねぇ、育児休業制度ができた頃は、子供が産まれたら辞めるのが当たり前の時代だったと思うのです。子供が産まれたら、ちゃんと休んでもらって、復帰したら、ちゃんと仕事に戻れるという。時代背景から、ちゃんと休ませる方に頭が行っていたと思いますね。
でも、休むのがあたりまえになれば、これから先は、早く復帰してまとまったお金がもらえて在宅勤務ができるような選択もできるようにするのがベストだと思いますね。
社会全体を見通すと、簡単には変えられない現状
村木さん: ただ、日本でそういう制度を作るときに一番心配なことは、「労働者が本当に選べますか?」ということなんです。昔はお休みを取らせないというのがあったから。労働組合が心配するのがそれです。
例えば、育児休業は1〜2年とかあったはずなのに、無言のプレッシャーでみんな3ヶ月で復帰せざるを得ないみたいな会社があっても不思議ではないですよね?
廣田: あー、なるほど!そこに全体を見通した制度設計の難しさがあるんですね。
革新的な民間企業から動いてくれることに期待
村木さん: 公的制度でそこまで踏み切ることは難しいと思うんです。一方で、育児休業制度ができたときには、「こんなに長く休暇が取れますよ!」というのをウリにして、後に失敗した!と思っている会社が多いのも事実だと思うんですよね。
多様な働き方を推進できる企業が率先して、早期に職場復帰したい女性のための支援制度を打ち出していくことで、世の中の見る目も変わっていくのではないかなと思います。
その点で、これについては、革新的な民間企業から是非動いて欲しいと思いますね。
廣田: 大変勉強になりました!ありがとうございます。
今の方が過保護?働く女性の覚悟について
廣田: 改めて、村木さんの時代は、子育てと仕事の両立を支援するための制度がなく、本当に大変だったと思うのです。
それにも拘らず、村木さんのようにガッツのある女性の皆さんは、ご苦労されながらも、うまくやりくりしてバリバリと両立されていたように思います。
こういうお話を聞くにつけ、今の方が過保護になっているのではないかと思うのですが、働く女性の覚悟について、何かご意見はございますか?
色が美しいとお褒めくださったので、カラーカードをご覧いただきました。熱心に説明を聞いてくださる村木さん
「働きやすさ」と「働きがい」
村木さん: 企業と女性活躍について話すときに、座標軸が2つ要るんですよ、という話をよくするんです。
「働きやすさ」と「働きがい」ですよ、と。
必要条件は、働きやすさ。十分条件は、働きがいがあるかどうか。そうじゃないと、辞めないけど働かない社員を作ってしまうでしょ。
女性の方によく言うのは、権利を使って休んでも、後輩たちから見て、いい顔していないような先輩社員になりたいわけじゃないでしょ?と。
「仕事を楽しんでいます!」といういい表情でないと、「ああいうふうになりたい!」と後輩は思いませんよね。
育児は大変だけど楽しく魅力的。仕事に引力がなければ本気になれない
村木さん: 一方で、会社には、女性が本当に働きがいを感じる仕事の与え方をしてますか?と。
だって、育児は、大変だけれども楽しいし、魅力があるわけです。仕事に引力がなかったら子育てに行っちゃうでしょ。要は、仕事に引力がないとダメなんです。
同じ会社で復帰するにあたり、これがやりたいから復帰するとか、働き続けたからやりたい仕事に就けたとか、昇進するとか、給与が上がるとか、技術が上がるとか……。本人の成長がなかったら、そんなに本気になれないですよね。
廣田: いやー、そういう視点から考えたことがなかったですけれども、本当に仰る通りですし、多くの企業のマネジメントに是非考えて頂きたい問いかけですね!
村木さんのお仕事に対する情熱の源泉は?
廣田: さて、村木さんは、官僚時代、相当な激務をこなされて、事務次官まで勤め上げられたかと存じます。一方で、村木さんは消去法で公務員を選ばれたとお伺いしました。
また、労働省(当時)に入られても、お仕事はご自身では選べなかったかと思います。その中で、村木さんのお仕事に対するパッション(情熱)の源泉は何だったのかについて教えてください。
村木さん: うーん、あんまりアグレッシブな人間ではないので、やらなきゃいけないことをひたすらやっていたんだと思いますが、公務員で面白かったのが、いい仕事をすると現場の人が喜んでくれることでしたね。
「いい制度を作ってくれた」「これでこういうことができるようになった」という現場の人のエネルギーとか、感謝の言葉に本当に支えられた気がしますね。
正直、そんなに愉快じゃない仕事もすごく多いので、それでも何でやっていられたかというと、それで現場が良くなるとか、現場の人が喜ぶとか、そういう人たちにうまく乗せられて仕事してたんじゃないかと思いますね(笑)。
今はすごくお世話になってきた方々の御恩返し
廣田: そのように考えてお仕事をされていた村木さんがとても素敵です!今のお仕事においては、どうですか?
村木さん: 今は、殆ど御恩返しというかご奉公だと思ってます。これまですごくお世話になってきた方々に、「あんた辞めたんだろう?暇だろう?だったら、これやって!」と言われてやらせていただいているお仕事が多いんです(笑)。
「いい制度を作ってくれた」という現場の人のエネルギーや感謝の言葉が仕事に対する情熱の源泉だったと村木さん
国家公務員の最高位まで上り詰めた村木さん。客観的に見て、優れていたところは?
廣田: 今日お話をお伺いしていて、村木さんは本当に謙虚でいらっしゃるので、敢えてお伺いしてみたいのですが……。
国家公務員の最高位である事務次官まで昇進されるのは、当然ながらごく限られた一握りの方になると思いますが、客観的にご覧になって、どこが優れていたと思われますか?
村木さん: うーん、難しいなぁー。何だろう??多分、柔軟な対応力?
先輩にも、「たいして頭も良くないし」って言われるんです(笑)。でも、「まぁ、あいつにやらせておけば、何とかしてくるんじゃないか」って思われるらしいんですね……。
廣田: なるほど!その粘り強さは、どこからくるんですか?
自分だけで頑張ろうとしなかった。素人の分野は、優秀な官僚の頭というよりは、普通の人の常識で判断
村木さん: うーん……。多分、自分だけで頑張ろうとしないからかな。労働省に入って20数年経ったときに、厚生労働省になったんですね。全然知らない領域がいきなり入ってきて、しかもそっちの方が大きい。
それを知っている人たちと一緒にやるしかなく、部下から色々なことを聞いて、教えてもらいながら進めるしかない。
もちろん、最後は自分で決めないといけないんだけど、自分で何もかもやらないといけないと自分も思わなかったし、もっとラッキーなことに、「あいつに分かるわけがないよな。来たばっかりでこの分野も始めてだし、助けてやろうか」的な、ラッキーな雰囲気があったんですね。それで無理をせずにできたんじゃないかなぁと。
知らない方から虚心坦懐に色々なことを聞いて、優秀な官僚の頭というよりは、普通の人の常識で判断していくしかない。その分野は素人だから。で、皆に助けられてできたというのが一番かな。
特技は人に助けてもらうのが上手なんだと思う(笑)。
廣田: それは、村木さんがそういう気にさせる方なんだと思いますよ!
人生は長い。だから、焦らなくていい。ただ、諦めないで
廣田: Heading Southは、ありたい自分に向かってチャレンジする人を応援することを軸に活動しております。
何かにチャレンジしたいと思っているけれども踏み出せない人や、何をやりたいか分からず模索中の方への、アドバイスやメッセージをお願いします。
村木さん: この年になってすごく思うのは、人生は長いということ。
これまでも結構長かったなぁと。だから、焦らなくていいんだと思う。苦労した経験、失敗した経験は後ですごく役に立つし、本当に焦らなくていい。ただ、諦めないで。
よく後輩に言うのは、しんどいときは歩調を緩めてもいいし、もっと辛かったら、うずくまってもいいと。だけど、エネルギーが戻ってきたら、もう一回、ちゃんと歩き出すことの方がすごく大事。
人生長いので、ときどき休んで、ときどき歩いていると、結構遠くまで行けるんだなと、66年経つと、すごく実感しますよ(笑)。
廣田: 心に染みる素晴らしいアドバイスをありがとうございます!
謙虚なお人柄、人の話を聞く姿勢、言葉の選び方など、様々な面で勉強させて頂きました。貴重な機会をありがとうございました!
多忙な中で、ご夫婦、ご家族との素晴らしい関係性を継続されてきた秘訣は?
廣田: さて……、最後に、個人的にも今回是非お伺いしたいことがございます。ご著書を拝読し、ご夫婦、そしてご家族の関係性が本当に素晴らしいことに大変感銘を受けました。
特に、ご主人が村木さんのことを「共に歩む同志であり、感じたこと、考えたこと、感激したことをお互いに受け止めあえる関係」と仰っていたこと。また、お嬢様がご両親の姿を見て、「仕事が楽しいと人生の半分は楽しいんだ」とお話しされていたのがとても印象的でした。
村木さんは午前帰宅が日常なくらい多忙な日々を過ごされてきたかと存じます。その中で、そのような素敵な夫婦関係、家族関係を築いて継続するために心配りをされてきたことなどございましたら、是非教えてください!
どんな小さいことでも一緒に楽しむ。たくさん会話をする
村木さん: うーん、何かあるかなぁー……。一緒に楽しめることはどんなに小さなことでもいいんだけど、食事だったり、旅行だったり、一緒にいる時間を大切にして、たくさん会話をすることは大事だったかなと思いますね。
あと、それに加えて、共働きで子供を育てることもとても大変だし、事件もとても大変だったし、私は新婚2ヶ月で右足4箇所骨折して2ヶ月入院したりとかもあって……。
そういう大変なことが起きるたびに割と家族の絆が強くなったと思いますね。
共働きはお互いを理解し助け合う関係性が不可欠
村木さん: うちの夫は、新婚のときの怪我が彼にとって、全ての敗因だったと言いますね。全く動けないから家事をせざるを得なかったんですけど、その後、家事をすることがあたりまえになりましたから(笑)。
廣田: なるほど。旦那さまも本当にお忙しくされていたのに素晴らしいですね。共働きを両立するためには、双方がお互いを理解し助け合う関係性が不可欠ですよね。まさに、ベストパートナーでいらっしゃるなと思いました!
今日は多くの示唆に富んだお話をお伺いすることができ、とても勉強になりました。貴重なお時間を本当にありがとうございました。
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【プロフィール】
村木 厚子(むらき あつこ)
元厚生労働事務次官
1955年高知県生まれ。高知大学卒業後、1978年、労働省(現・厚生労働省)入省。女性や障害者政策などを担当。2009年、郵便不正事件で逮捕。2010年、無罪が確定し、復職。2013年から厚生労働事務次官。2015年退官。困難を抱える若い女性を支える「若草プロジェクト」代表呼びかけ人。累犯障害者を支援する「共生社会を創る愛の基金」顧問。伊藤忠商事社外取締役、住友化学社外取締役。津田塾大学客員教授。著書に『あきらめない(日経BP社)』等がある。
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”多くの靴を見ている立場から申し上げると、木型から考えて作っているブランドは、実はそんなに多くないんですよ。コンフォート性でも単にクッションを入れたりとか、ファッションが先に立っていたりというブランドが多い中で、一番重要な木型から入られているのは素晴らしいと思います。お客様に合う木型と言った場合、では、「100人いたら、100通り作りますか?」というとそうはいかないですよね。その中で、一番世の中で困っている人、即ち、開張足の人にフォーカスを当てている。木型から考えている人は多くないので、それは大きな強みだし、かつ、実現できている。それを謳っていても、実はそうなっていないところも多いんです。”
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