HSインタビュー vol.9-2:残間 里江子さん(プロデューサー)「お会いした方たちのすべてが、仕事の流儀の源に(後編)」
HSインタビュー第9回のゲストは、残間 里江子さん
Heading Southは、「Wardrobe designed to “move” you. 『動き出す』あなたのそばに、『感動』のいつもそばに」をブランドステートメントに、ありたい自分に向かってチャレンジする人々に寄り添い、応援する存在でいたいと願っています。
Heading Southが理想とする女性像「ありたい自分に向かって、しなやかに生きるひと」にクローズアップする「HSインタビュー」の第9回のゲストは、残間 里江子さんです。
後半となる今回は、メディアのプロデューサーの先駆者である残間さんの仕事の流儀や、これまででお会いした方たちとのエピソード、主宰されている『クラブ・ウィルビー』などについてうかがいました。
さらにはHeading Southにアドバイスまでいただく嬉しいサプライズも!
是非お楽しみいただけましたら、嬉しく思います。
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廣田: 編集者、プロデューサー、テレビ・ラジオ出演さらに著書も多数と、様々な側面をお持ちですが、仕事の流儀といいますか、大切にされていることはありますか?
残間: その方とどんなに親しくなって電話番号を教えてもらったとしても、仕事をお願いするときは直接本人に電話をかけたことは一度もありません。
事務所という窓口がある以上、そこに入れるのが当然。親しいからと本人に直接連絡して頼む人もいますが、私は絶対にそれはしません。
必ず、NOと言える隙間を相手に与えるようにしています。もちろん自分がお願いされたときは精一杯やるけれど、こちらからお願いするときは、相手がNOと言える隙を残さないとごり押しになってしまいますから。
直接電話しないのは相手に「断る隙」を与えるという意味もあるんです。
廣田: なるほど、その適度な距離感を保とうとされる姿勢に残間さんの仕事の流儀と、優しさを感じますね。
インタビューで試されるのは自分
残間: かつて、いしだあゆみさんにインタビューをしたとき「あなたの仕事って、私が試されるんじゃなくて、あなたが試されるのよね」と、言われたことがあったんです。
彼女が以前、高名なエッセイストにインタビューされたときに「10年前に答えていたことと違うじゃないですか!」と言われて、誌面でもそのことをあまり良く書かれなかったそうです。
でも人は、10年も経てば考え方だって変わるのはあたりまえ。人に話を聞くということは聞く人の品性が問われるということで、私が下品な質問とか、相手をおとしめようというような質問をしたら、頭のいい人ならその意図がわかります。
わざとその意図通りに落ちてくれる人もいるけれど、きっとそれで関係は終わってしまいますよね。人に会い、話を聞く人間として、あゆみさんのその言葉は肝に銘じています。
廣田: 私もこうやってお話をうかがう上で、その言葉を常に心に留めておきたいと思います。
残間: 私の仕事って、特に女性週刊誌の記者時代は10お願いしても7は断られる仕事でした。断られた哀しい歴史が長いから、大抵のことは引き受けようと決めています。
それも五輪真弓さんをインタビューしたときの「凄く落ち込んでどうにもならないときは、きた仕事を全部受けてみる」という言葉がきっかけに。
それ以来、落ち込んで明日をも知れないときこそ、今までなら断っていたような仕事も全て受けるようにしています。
言った本人はもう忘れているでしょうけれど(笑)、お会いした方たちの言葉って、自分の中では未だにしっかり覚えています。
そういう方たちにずいぶん教わってきたなと思います。
廣田: 人と会うこと、そしてそこで得た言葉は、残間さんの本当に大切な財産なんですね。
そんな数々のチャレンジを重ねられてきた反面、挫折もさまざま経験されてきたのではないかと想像します。仕事で落ち込んだり、辛い経験をされた際に、どうやって乗り越えられてきたかを教えていただけますか?
残間: いろんな場面で、嫌だとかNOとかっていわれることも、もちろんあります。そんなときは、もうお呼びじゃなかったんだなって、きっぱり諦めますね。
もう少しわかってもらえるのではないかと食い下がっても、駄目は駄目なのです。人と人のことだから。
プロデューサーは自分が面白いと思っても、「待てよ、周りの人はどう思うかしら」という複眼がないと駄目なんです。
拒否されたり成立しないってことは、その人にその企画が向いていなかったり、私が嫌われたり、合わなかったり。何かの要素で拒否されたのですから、仕方ないって思うしかない。
私はいつも人の邪魔になりたくないと思っているんです。逆に言えば、実は小心者で怖がりとも言えるんだけど(笑)。
小気味よく話されるお姿に、溢れるエネルギーを感じました!
世代にそして孤独に寄り添う気持ちを大切に
廣田: 話が少し変わりますが、単身世帯が増加し、2040年には4割に迫ると言われています。加えて、コロナ禍で、すごく孤独に苦しんでる方も多いと思うんですが、ブログなどを拝見しても残間さんはおひとりを楽しんでいらっしゃるようにお見受けします。
残間: 1人の気楽さと、それが故にふと、なんだかわからない寂寥感みたいなものもあります。でも、最後はやっぱりみんな1人だと思うんです。
20代30代では気づかないけど、恋愛したり結婚したりを経て、40代50代になると2人でいる方が、かえって1人より淋しいってことも知ったりする。
だから、若い人にも、「基本的に最後はひとりなんだよ」って言ってるんです。私の「ひとり」は「1人」ではなく「独り」ですけれど。
そうは言っても、孤独を抱えて辛い日々を送っている人達もたくさんいます。私も知り合いの身元引受人になったり、定期的に電話するなど気にかけている人が4人ぐらいいますが、話を聞きながら、「でもやっぱりみんな独りなんだよ」って言っています。
私もこうやって今日は電話しているけれど、明日の今頃どうなってるかわかんないのよと言ったりして。慰めているというか、自分に言い聞かせてる部分もあるんですけどね(笑)。
廣田: みなさん話を聞いてもらうだけでも、きっと嬉しく励みになるのではないでしょうか?
活躍の裏で、そうやって皆さんの支えにもなられているとは存じ上げませんでしたので、とても感銘を受けました。
人とのネットワークという点で、残間さんは『クラブ・ウィルビー』を立ち上げられていますよね。従来の既成概念とは異なる新しい大人のネットワークとして設立されたとお聞きしていますが。
残間: 日本の文化って、年齢の壁ってすごくありますよね。新しいことは若い人からというような、”New”と” Young”がイコールだと思っているところがあるんです。
でも、実際はそんなことはないと思っていて。既存のシニア像というのが、現実とちょっと違うという思いが初めにあったんです。
私が還暦になろうという頃、大企業の40代くらいの人たちにとって60代って、盆栽いじって孫と遊んでるみたいなイメージだったのです。
だから例えばスポーツウェアの企画でも、だぶだぶのTシャツにスパッツみたいな体型を悪く見せる提案だったり、色もわびさびのある地味なものがいいでしょうなんて言われたり(笑)。
でも私達の世代って、ビートルズやボブ・ディラン世代ですからね。ファッションもミニからミディ、アイビーからTシャツ・ジーンズと、いろいろな体験をしているんですよね。
映画も大島渚監督のヌーヴェルヴァーグや、演劇は天井桟敷や状況劇場のアングラ劇などを観て育っていますから、その前の世代とは全然違うシーンを体験しているのに、そんな感性に逆行したミスマッチな商品ばかり作っていたと思います。
そんな今の本当の大人たちが興味を持てる企画を通して、ネットワークが広がるクラブとして設立したんです。
「本当に色がきれい。なかなかこういう発色の靴ってないのよね」と残間さん。
“チャレンジ”の意味とHeading Southが向かう道
廣田: Heading Southも年齢に関係なく「ありたい自分に向かってチャレンジする女性の一歩を支える」ことを理念にしています。このインタビューも、自然体でありたい自分に向かってチャレンジしたいと思う方が増えて欲しいという気持ちも込めています。
残間さんのようにチャレンジしたいけれど、踏み出せない人、何をやりたいか分からず模索中の方もいらっしゃると思うのですが、そんな方たちにアドバイスをいただけますか?
残間: 厳しいことを言えば、「背中を押して欲しい」と思った段階で、実は駄目かな(笑)。背中を押されないとできないようなことでは、もう何をやっても駄目だと思います。
でも、もし何かを始めたいなら、幼い頃に誰かに褒められたことをやった方がいいのでは?したいこととできることって違いますからね。
50歳ぐらいまでは、未知なるものにチャレンジして自分の限界を知るとか、新しい可能性を知るのもいいと思います。でも例えば還暦も過ぎたら、できることをやった方が続くし、褒められるからさらに頑張ることができると思うんですよね。
廣田: なるほど、確かに押されるのではなく、自ら動かなくては本当のチャレンジにはならないですね。
残間: それと“自然体”というのも、口にした途端それは“自然体”じゃないと思うんです。
誰かに何か言われるわけでもなく、進みたい道を進み、したいことをするのが自然体。誰かを踏み台にしたり迷惑をかけたりしないから、わがままとは違う。
自然体に見える人も、自然体でいようという意思を持って自然体にしているわけではないはずですよね。
それを「自然体でやってるの」と言った途端に、作為的になっちゃう気がします。
廣田: 確かに!今そうご指摘いただいて、おっしゃる通りだと思いました。
残間: だから、このHeading Southの靴も”自然体”というより、知見と経験のある人しか選ばない靴、いや、そういう人しか選べないと言ってもいいんじゃないかな。
履き心地の良さも素晴らしいし、何しろこれだけきれいなカラーが揃っている。きっとひとりひとりの心に響く色があるはずです。
自分に響く色を自分自身で探し当てるんだと、そんな意思を持つ人が履く靴だと思います。
靴って、一足ですごく気持ちが変わりますよね?Heading Southは、何か自分の新しい可能性とか希望を見いだしたい人、そんな人に選んで欲しいなと感じました。
廣田: そう感じてくださるのは本当に嬉しいです!アドバイスまでいただいて、恐縮してしまいます。今後のHeading Southのコンセプトにも是非活かしていきたいと思います。
今回のインタビューでは、残間さんの仕事の流儀や心配りの在り方など、私も見習いたいと思うことが多く、大変勉強になりました。貴重なお時間を本当にありがとうございました!
お話が尽きず、この日は予定のお時間を大幅に超過。時間が過ぎることを気づかぬほど、お話に夢中になってしまいました。
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【プロフィール】
残間 里江子(ざんま りえこ)
1950年宮城県仙台市生まれ。1970年、短大を卒業し静岡放送アナウンサーに。その後雑誌記者、編集者を経て1980年に企画制作会社を設立。山口百恵の自叙伝『蒼い時』の出版プロデュースを手掛ける。その後、編集長として雑誌『Free』(平凡社)を立ち上げ、「男女の一線を超える」というキャッチフレーズとともに、男性誌・女性誌に属さない雑誌作りが話題を呼んだ。その他にも出版、映像、文化イベントなどを多数企画・開催。
2005年「愛・地球博」誘致総合プロデューサー、2007年には「ユニバーサル技能五輪国際大会」総合プロデューサーを務め、29万人を超える来場者を記録する。2009年には既存の「シニア」のイメージを払拭した新しい「日本の大人像」の創造を目指し、会員制ネットワーク「クラブ・ウィルビー」を設立。
国土交通省「社会資本整備審議会」、財務省「財政制度等審議会」、文部科学省「生涯学習審議会委員」、内閣府「男女共同参画推進連携会議」など行政諸機関の委員を数多く歴任。『もう一度 花咲かせよう』『閉じる幸せ』『人と会うと明日が変わる』など著書も多数。
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