HS Brand Story vol.4: 工場探しの旅へ
(『HS Brand Story vol.3: 運命的な出逢い』を読む)
工場探しの日々
2019年の年明けから、イタリア人女性とメールのやり取りをしながら、今回のシューズの開発・製造に適した工場を探す日々が始まりました。イタリアは母国語が強い国であることから、イタリア語が話せない私にとって、彼女の基礎知識やサポートは本当に有難いものでした。
候補となる工場をリストアップし、2019年3月、彼女とミラノで待ち合わせをし、工場を探す旅に出掛けました。
リヴィエラ・デル・ブレンタへ
一度のトリップでできるだけ多くの工場に訪問できるように、ターゲットとするエリアは事前に決めていました。ヴェネツィアの郊外に位置するリヴィエラ・デル・ブレンタ。11世紀以降、東方貿易によって巨万の富を得たヴェネツィア共和国の貴族達によってブレンタ運河沿いに建てられた美しいヴィラの風景で観光名所としても知られるこのエリア一帯は、レディース・シューズ産業の中心地でもあり、ラグジュアリーブランドのシューズ工場が数多く点在します。車を借りてミラノから車で約3時間、数日間を掛けてアポイントが取れた6つの工場を回りました。
リヴィエラ・デル・ブレンタのヴィラ
パッションを感じる家族経営工場との出逢い
イタリアは、ファミリー企業がとても多い国で、実際、訪問した工場の多くはファミリーにより経営されていました。工場への訪問前は、イタリアの工場に対する期待値が高く、どの工場もものづくりへのパッションに満ち溢れているのだろうと勝手な想像をしていましたが、複数を訪問し、必ずしもそうでないことも認識させられました(苦笑)。
訪問先のひとつに、創業者であるオーナーのおじいちゃんが出迎えてくれた工場がありました。創業からこれまでのお話をお伺いし、実直で丁寧な仕事をされてきたこと、また、その哲学を子供達の代へ継承されようとしていることが窺えました。
美しく整頓され、管理された工場を見学させていただき、その後、こちらから、開発したい靴の話や事業計画などを一通りお話ししました。真摯に耳を傾けてくださり、一緒に協力してくださるという強いパッションを感じました。
コンフォートシューズの開発に長け、著名なラグジュアリーブランドのシューズの製造も行い、仕上がりも丁寧でとても美しいこと。そして、何より、おじいちゃんのお顔がその方の人間性を全て物語っていると感じ、是非ここでお願いしたいとその場で決めました。
その後、約1年を掛けて開発・製造が行われました。
慣れないデザイン画をひたすら描き続けたG.W.
帰国してすぐ、iPadとApple penを購入し、2019年のゴールデンウィークは、自宅にこもって朝から晩までデザイン画を描き続けました。木型を削ってもらい、初めての試作品ができあがったのが6月。過去の経験から、サンプルを過剰に期待すると気落ちするので、思いっきりハードルを下げて恐る恐る最初の試作品を見に行きましたが、思っていたよりも遥かに美しい出来栄えで、「流石はイタリア!」と驚いたことを覚えています。
開発段階において、パンプスとスニーカーの間を目指す私の素人同然の様々な無謀なアイディアにも耳を傾け、プロの目線からリクエストを昇華させ、サンプルに反映させてくれました。工場へ訪問する際は、必ずオーナーが同席してくれて、私たちと職人さん達とのやり取りをいつもニコニコしながら聞いていらっしゃるのを見て、幾つになられても本当に現場がお好きなんだと、幾度となく感心させられました。
美しいヴェネツィアの風景
(『HS Brand Story vol.5: Heading South!!』へつづく)