HS Brand Story vol.3: 運命的な出逢い

(『HS Brand Story vol.2: プロローグ〜後半』を読む)

再び始動・・・
日本での靴の開発を断念してから1年近くが経ち、心の傷が癒え、また何かにチャレンジしようという気力が徐々に戻ってきました。私自身は、もしチャレンジするのであれば、何かの課題解決になること、また、人をワクワクさせて、喜んでいただけるものをやりたいと思っていました。加えて、前回の挑戦から、最初に立てた仮説は崩れる可能性が極めて高いこと、そして、崩れると理解した上で、それでも変容し続け、やり切れるくらいのパッションを持ち続けられるものでなければ難しいことを学びましたので、それに当て嵌まるものを模索し始めました。

ただ、何を考えても、頭の片隅に、靴の再チャレンジのビジョンがチラつくのです。「いやいや、それはないでしょ(苦笑)!」と自問自答する日々・・・。他方、私自身や私の周囲における靴への課題は、相変わらず解消されていませんでした。

散々悩みましたが、「目の前にあるプランを今度こそやり切りたい!」という思いが頭から離れることはなく、2018年の冬、とうとう再チャレンジを真剣に考え始めました。サイズ計測などの手法ではなく、履いてくださる方の足なりになるような素材の方がフィット感を得やすいと考え、そして、開発する場所は、靴づくりで世界最高峰のイタリアと決めていました。全く伝手がないのにも拘らず・・・です(笑)。

欧州への一人旅
ちょうどその少し前の2018年の秋、ヨーロッパへ一人旅をする機会がありました。一人旅は学生以来でしたが、色々と悩んでいたこともあり、自分と向き合い、今後の人生を考えたいと計画した旅でした。まだ、次の構想を漠然と練っていた頃だったので、ヨーロッパへ訪れたものの、パンプスのことは全く頭になく、イタリアには立ち寄らない旅程でした。

Paris
滞在先のブリュッセルからパリへ移動した週末、運悪く、パリでは、ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト運動)のデモがちょうど本格化した日でした。デモの存在は事前に認識していたものの、実際にパリ市内中心部へ入ると、爆発音が鳴り響き、あちこちで白煙や炎が上がり、お店の窓ガラスが至る所で破られ、まるでテロのような恐ろしさがありました。

運命的な出逢い
ひとりぼっちで、不安でとても心細い気持ちになりましたが、友人に頼まれたものを買うために気を取り直して目的のお店へ向かいました。そこで、とても気さくで親切な店員さんと出逢うのです。接客応対が素晴らしく感心させられたのですが、それだけでなく、買い物が終わって見送りの際、街が混乱しているからタクシーに乗った方が良いと、私と同世代と思われる彼女は、車に轢かれそうになりながら大通りを走り回り、捕まらないタクシーを必死に捕まえようと、何度もトライしてくれました。

結局、タクシーは捕まらなかったものの、彼女のおかげで、心細く不安だった私の気持ちは一気に温まり、彼女の存在に心から感謝しました。タクシーを待つ間に素性を聞くと、彼女は、パリに住むイタリア人で、元々はミラノに住んでいたものの、そのブランドがとても好きで、どうしても働きたくて、パリでのポジションの募集を見つけ、それ以来パリに住んでいるということでした。また、私と同じ歳で、しかも同時期にアメリカの大学に留学しているなど、偶然にも共通点が多く、話が弾みました。

翌朝、彼女に対する感謝の思いを何とか伝えたいと思い、戴いたショップカードに記載されていたショップのメールアドレスに御礼メールを送り、その後、パリに滞在すると必ず立ち寄るノートルダム寺院へメトロで向かいました。「彼女にまた会えたらな・・・」と考えていたその時、奇跡的な偶然に目を疑いました。乗車した車両に、彼女を見つけたのです。私はすぐに降りなければならなかったので、軽く挨拶をした程度でしたが、これには、(勝手ながら)運命を感じずにはいられませんでした。

一筋の光
帰国後暫くして、イタリアでの靴開発の構想を本格的に練り始めました。全く伝手がない中で、ふと彼女のことを思い出しました。彼女はイタリア人だし、高級素材を取り扱うラグジュアリーブランドの店員さんでもあるから、ひょっとしたら、工場を探すにあたり、何かアドバイスをくれるかもしれない・・・。勝手な思いですが、先ずはダメ元で、自分がこれまでやってきたこと、何をやりたいと思っているのか、そして、そのためにイタリアで工場を探す必要があることをしたため、彼女に送りました。

それから、半月後くらいでしょうか、有難いことに彼女から返信がありました。そこには、彼女の祖国であるイタリアへの思い入れに対する感謝と、彼女自身も、生産の現場を見て勉強したいから、工場探しを手伝いたいという内容が綴られていました。

信じられないことに、全く伝手がなかったところから、一筋の光が見えて来たのでした!

昔のプロジェクトの仲間たちと

つづく・・・