HSインタビュー vol.16−2: 林 美樹さん(そごう横浜店上級シューフィッター)「靴で健康を守りたい(後編)」

第16回目のゲストは、林 美樹さん

Heading Southは、ありたい自分に向かってチャレンジするひとに寄り添い、応援したいとの思いを軸に活動をしています。

自分らしさを大切に、強く美しくしなやかにチャレンジする人々の気持ちを後押しし、そんな素敵なひとが増えることを願ってお届けする「HSインタビュー」の第16回のゲストは、林 美樹さんです。

10万人の女性の足と向き合ってきた、予約でいっぱいの百貨店シューフィッター

林さんは、そごう横浜店に勤務する上級シューフィッター。シューフィッターとは、お客様の足に合った快適な履き心地の靴を提案する専門家。

林さんは、これまで10万人近くの女性の足と向き合い、靴選びはもちろんのこと、歩き方から中敷きを使った微調整などのサービスもご提供されています。お客様に寄り添った的確な提案が評判となり、コロナ前は接客指名に2ヶ月待ちが続くなど、お客様からの高い支持を得ていらっしゃいます。

全国に約3,500名在籍するシューフィッターの中でも、約350名に限られる上級(バチェラー)資格の取得者でもある林さん。現在は、全国に11名しかいない最上級(マスター)資格の取得試験を近々に控えており、取得できれば、百貨店では初の同資格保持者となります。

HSインタビュー初の男性ゲスト

さて、今回は、HSインタビュー初の男性のゲストです。

林さんとお話しさせて頂くと、「履き易くても不恰好な靴は、女性は絶対に履かない。」「ヒールを履きたければ、諦めないで欲しい。」「女性には綺麗な靴を履いて欲しい。」など、女性の気持ちに寄り添ったご発言がとても多いことに気付かされます。

まさに、女性が健康で輝く毎日を過ごすための頼もしいサポーターでいらっしゃることに加えて、林さんご自身も、シューフィッターとしての専門性を極めるだけでは飽き足らず、お客様の健康のためにさまざまな資格を取得されるなど、チャレンジを続けている方でもあります。

また、私自身がお客様と接する中で、靴のことでお悩みの方がとても多いことを認識させられると同時に、正しいサイズ感で靴をお履きになられていない方も多いようにお見受けする機会が増えてまいりましたことから、是非、林さんにお話をお伺いしたいと思いました。

後編となる今回は、正しい靴の選び方や、林さんがお勧めするシューフィッターの活用方法についても教えて頂きました。また、本文後半にございます、林さんの靴で人々の健康を守りたいとの熱い思いも、是非感じ取っていただけたら嬉しく思います。

是非お楽しみいただけましたら幸いです。 

※林さんのアドバイスをご希望の方へ:記事の末尾にご案内がございます。是非そちらをご確認ください。

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廣田: 前編の最後にお話し頂きましたが、メーカーによってもサイズが異なるため、先ずはお客様にご自身のサイズを知っていただくことがとても大切だと思いますが、正しい靴の選び方についても是非教えていただけますか?

正しい靴選び、セルフチェックの方法

林さん: もちろんです。お客様がご自身でチェックできるものをお伝えしますね。

ポイントは、①かかと②幅③つま先の3つです。

①かかと: 先ず、かかとですが、履いた時に立って歩くか、両足で背伸びをしてください。

両足で背伸びしたときに、かかとが脱げないかどうかを見てください。脱げかけるくらいでもダメです。かかとが、背伸びしたときには脱げるけれども、歩いたら脱げないということがあるんですが、歩いて脱げない、もしくは、脱げかけないようであれば、ギリギリ大丈夫です。状態を見て、緩い場合は調整を行います。一方、かかとが歩いて脱げるのは絶対にダメです。

②幅: 次に、幅です。幅は、締め付けが嫌かどうかを確認してください。

靴の素材が革の場合は、「幅がきついなぁ」と感じてもやめなくても大丈夫です。ただ、革は伸びるものの、伸ばすには2〜3回履いて頂く必要があります。ポイントは、この靴を2〜3回履けるかどうか(革が馴染んでくるまで履き続けられるかどうか)で考えてみてください。

③つま先:  最後に、つま先は、立った状態で親指を上下に動かしてみて、動くかどうかを確認してください。動かなければ、その靴は合っていません。

次に、捨て寸(つま先の余裕部分)は1cmは必要と言われますが、ご自身で判断するのは難しいと思いますので、歩いたときに親指に締め付けがないか、当たっていないかを確認してください。ぎゅーっと締め付けを感じる場合はNGです。

廣田: ポイントに絞った分かり易いご解説をありがとうございます!

接客時のお褒めのお言葉で一番嬉しいのが、「楽しかった」とのお言葉、と林さん。素敵です!

廣田: 先ほど、大きめのサイズ感がお好きな方が多いというお話をしましたが、靴は、ピッタリ履いた方が楽だと思うのですが……。

靴はピッタリ履いた方が楽。但し、足に理解させる必要がある

林さん: まさにそうですね。ただ、お客様によって、お好みがあるんですよね。正しいサイズが小さいものだとして、お客様は頭では理解されたとしても、足が拒否するんですよ。

私は、ここがシューフィッターとしての腕の見せ所だと思っていて。

先ずは、お客様がぴったり目が好きなのか、嫌いなのかをいち早く見抜くんです。
ぴったり目が嫌いなお客様は、いくら正しいサイズだとしても、足が拒否しちゃうので、履けなくなるんです。

私の場合は、大きめのサイズ感がお好きな方には、敢えて緩めのサイズでお売りします。但し、ギリギリの緩めです。

例えば、お客様のサイズが本当は23.0cmの方が良いのだけれども、お客様が23.5cmをお好みの場合は、お客様が我慢できる範囲で23.0cmに寄せて、中敷きなどで調整を行います。

そうすると、お客様は、ピッタリの方が楽だと気づかれるんです。
次の来店の際に、「23.0cmにしてください」と言われたら、「やったー!」って思いますね。めちゃくちゃ嬉しい。

廣田: なるほどなぁ。正しいサイズ感を知っていただくためには、プロセスが必要なのですね。

林さん: はい。正しいサイズにできる限り寄せて履いていただくことで、足が理解し、次は正しいサイズで履きたくなる。

多くのシューフィッターは、こういうとき、正しいサイズだから、23.0cmを推しちゃうんですよ。でも、押し切るのは双方不幸になりますよね。

廣田: 本当に仰る通りですね。肝に銘じます。

スニーカーの靴ひもを締めないまま脱ぎ履きしている人は必読です!

林さん: もうひとつ、当たり前のことで、多くの方が実践されていないことがあるので、是非お伝えしたいことがあります。

今はコロナでスニーカーを履いている方も多いと思います。ただ、殆どの人が靴ひもを締めたまま脱ぎ履きをしてるんじゃないかと思います。ただ、これはあり得ないですね。

履くたびにしっかり靴ひもを締めてみてください。驚くほど足が快適になりますよ!先ほどの話と同様ですが、快適さが分かると、靴ひもをしっかり締めないで、ゆるゆるで履くのが嫌になると思います。

廣田: 確かに、これは多くの方が実践できますね!ありがとうございます。

お客様のお好みのサイズ感に寄せながら、最終的に正しいサイズへ誘導するのがシューフィッターの腕の見せ所、と林さん。流石です!

廣田: 林さんは、全国から林さんを求めてご予約が入り、コロナ下でも予約が途切れないほどの人気でいらっしゃるかと存じます。林さんがお持ちの知識や経験に基づく的確なアドバイスはもちろんではあるものの、林さんの人気の理由はそれだけではないようにお見受け致します。接客時に意識されていらっしゃることがございましたら、是非教えていただけますか?

お客様に寄り添う気持ちを大切に

林さん: 一番は、お客様に寄り添うことですね。サイズ感はピッタリがお好きなのか、嫌いなのか、快適なのが好きなのか。ただ、女性ですので、ファッション性、デザイン性も絶対に必要ですよね。どれだけ足に合う靴でも履きたい靴じゃないと、女性は絶対に履きませんよね?

幸い、百貨店でシューフィッターにご予約くださるお客様は、お気に入りのお洋服でご来店くださることが多いんですね。その日のお召し物を見て、お好きなイメージを掴みます。

廣田: お客様がご希望されるものとお足が異なる場合はどうされるんですか?

お勧めのシューフィッター活用方法

林さん: お足に合うものと全く合わないものの間のグレーゾーンというのは結構広いんですね。

ここで、シューフィッターの活用方法として、お勧めの方法が2つあります。

ひとつは、足を見させて頂いた後に、お客様のご要望を掴んで、推薦する靴を5〜6足お持ちする方法です。その際、最もお勧めのものから順に、1軍、2軍、3軍と分けてお勧めします。

もうひとつは、一緒に売場を回りながらお客様が気になるものを教えていただき、都度、「それは○軍です」とお伝えしていく方法です。

基本的には、1軍よりも2軍の方がデザインは増えます。3軍はトラブルの発生確率は高くなりますが、より幅広い範囲でお選びいただけます。但し、4軍以下は買わないでくださいねと申し上げます。

あくまで私は道先案内人で、決めるのはお客様。それでご判断くださいとお伝えします。

廣田: そのようなアドバイスを頂けると、選びやすいですし、お客様の満足度も高いでしょうね!

林さんは現在、婦人靴だけでなく、ラグジュアリーブランドも含めた売場もご担当とお聞きしました。2つ目の方法は、婦人靴売場にお取り扱いのないブランドも含めて見ていただきたいお客様には、とても良いサービスですね。

林さん: ありがとうございます。あと、私は合わないなら買わない方が良いと思っているので、押し売り感がないところも、相談しやすいと言っていただけますね。

廣田: それは間違いないですね(笑)!

話題が豊富でとても気さくなお人柄の林さん。お話が尽きませんでした

廣田: 林さんのお仕事に対するパッション(情熱)の源泉について、教えてください。

靴の重要性をもっと知って欲しい

林さん: 長年、靴の接客に携わらせて頂いていますが、お客様があまりにも靴を重要視されていなかったり、知ろうされていないことがものすごく残念なんですよ。しかも、それで体を壊されているのも見てきています。

「靴で体を壊すって言われるけど、本当かな?」って思われるかもしれませんが、本当です。

靴で悪くなった方も、山ほど見てきていますし、逆に、病院でも原因が分からないと言われた腰痛持ちの方が、足に合った靴を2ヶ月履き続けたことで腰痛が軽減したのも見ています。

靴も大事だし、歩き方も大事。それを多くの方へ知ってもらいたいですし、何より、正しい情報を知って、良くなって欲しいですよね。この思いがひとつです。

女性には綺麗な靴を履いて欲しい

林さん: もうひとつは、女性には綺麗な靴を履いて欲しいという思いですね。

ヒールはダメなんじゃないかって思い込んでいる人がいますが、それは違います。ヒールを履きたいけど履けないからぺったんこの靴を履いていますという方にも、「もっと綺麗な靴が履けますよ。諦めないで」って言いたいです。
やっぱり、女性には綺麗な格好をして欲しいわけですよ、男性からすると(笑)。

綺麗な靴を履いて欲しい。でも、それで足を痛めて欲しくない。両方の思いがあるので、正しい選び方や履き方をお伝えしたいんです。

廣田: 素晴らしいですね。お話からも林さんの情熱が伝わってきます!

「靴で健康を守りたい。」お話の端々から、林さんの強い使命感が伝わってまいりました


靴で健康を守りたい

廣田: 林さんは、2018年からシューフィッター養成講座の講師を務められるなど、売場での接客に限らず、フィールドを広げてご活躍されていますが、今後の展望をお聞かせください。

林さん: 最新(2019年)の厚生労働省の調査によると、日本人の健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳となり、平均寿命との差は、それぞれ8.7年、12.07年となっています。

生きている間はできるだけ長く健康でありたいとは、誰しもが願うことですが、歩かなくなる(歩けなくなる)と衰えが本当に早くなります。そのために靴はものすごく重要であることを、是非多くの方に知っていただきたい。

私自身、その役割を担うことができればと思っておりますし、一緒に伝えてもらえる人材の育成やそれに適した靴の開発などにも携わりたいと思っています。

今、遠くは九州や東北、北海道から私に会いに来てくださるお客様がいらっしゃいますが、本当はかかりつけ医のようなイメージで、一番身近なシューフィッターに選んでもらうのが一番良いと思うのです。人材を育てて、各地に頼れるシューフィッターがいたら、皆さん嬉しいじゃないですか!

あと、足は本当に大切です。ご自身のサイズを知りましょう!と、皆さんには是非お伝えしたいです。

良い靴を長く履いて欲しい

林さん: 最後に、良い靴を長く履いていただきたいと思っています。

これまでの日本の文化は履き捨て文化だったと思います。決して、価格が高いから足に合うわけじゃないし、残念ながら、オーダーだって完璧じゃない。でも、品質は値段に表れます
品質が良いとは、長く履ける、崩れない、手入れをすればきれいに長く使えるもの。

靴は買って終わりじゃなく、そこからがスタートです。

履き始めから、足も靴も変化していきます。調整して手入れをして、ご自身の足に合った良い靴をずっと大切に長く履いて欲しいと思いますね。

廣田: 全く同感です。
 

足やサイズのお話など、学びが多かったのは勿論のこと、お客様のご要望にお応えしようと追究される林さんのお姿に深い感銘を受けました

廣田: Heading Southは、ありたい自分に向かってチャレンジする人を応援することを軸に活動しております。林さんは、一つの専門性を追究し、それを極めるためにあらゆることにチャレンジされていらっしゃるかと存じます。

何かにチャレンジしたいと思っているけれども踏み出せない人や、何をやりたいか分からず模索中の方へ、是非アドバイスやメッセージをお願いします。

自分の身近で一番興味があることを掘り下げることから始めてみる

林さん: 私の場合、もともと靴が大好きだったわけではなかったですが、結果的に専門性を高めることができたと思っています。正直、学生のときは何をしていいか分からなかったんです。ただ、たまたま靴売場に配属されて、靴が長かったので、今の立場になりました。

私の経験から申し上げると、「今、自分の身近にあるもので、一番興味があるものから始めてみて、見えてくるものがあるかもしれないよ」ということがひとつです。

もうひとつは、自分ひとりで何かを興したり、全てをひとりで頑張るのは難しいと思うんですね。是非、仲間を巻き込んだり、ネットワークに入り込んだりして、同じ興味のある人と話すことで、ヒントが得られることもあるんじゃないかと思います。

実際、私の場合は、2007年にシューフィッターの上級資格を取得した際に一緒に学んだグループから広がりができたんです。いつもその方々と勉強会をしたり、様々な方にお会いしに行って、素晴らしいご縁に発展したりしています。

是非、先ずは、一番興味があることを掘り下げることから、始めてみては如何でしょうか?

廣田: まさにご自身のご経験から貴重なアドバイスをいただき、本当にありがとうございます。今日は素敵なお話をありがとうございました!




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【プロフィール】

林 美樹
(はやし みき)
株式会社そごう・西武 そごう横浜店
マイスター バチェラーオブシューフィッティング(上級シューフィッター)

1986年入社以来、そごう横浜店の婦人雑貨を中心にキャリアを重ね、2002年より専門職へ転向、シューフィッターを志す。初級(プライマリー)、上級(バチェラー)シューフィッター資格を取得。2018年より、FHAシューフィッター養成講座の講師(パッキングワーク担当)を務める。現在は、国内に11名しかいない最上級(マスター)シューフィッターの資格取得を目指している。

保有資格:バチェラーオブシューフィッティング(上級シューフィッター)、幼児こども専門シューフィッター、シニア専門シューフィッター、健康ウォーキング指導士、フットケアトレーナー、食育アドバイザー


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林さんは、2024年6月に独立され、靴と足のコンサルティング「シューズアテンド」を展開されています。お靴でお悩みのお客様へ、靴お買い物同行サービスもございます。林さんのアドバイスをご希望の方は、シューズアテンドのウェブサイトにご案内がございますので、ご確認ください。

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