HSインタビュー vol.2: 経営者 平田 静子さん(前編)「強くてしなやかな軸を持とう」

HSインタビュー第2回目のゲストは、平田 静子さん
Heading Southは、「Wardrobe designed to “move” you. 『動き出す』あなたのそばに、『感動』のいつもそばに」をブランドステートメントに、ありたい自分に向かってチャレンジする女性に寄り添い、応援する存在になりたいと願っています。Heading Southが理想とする女性像「ありたい自分に向かって、しなやかに生きるひと」にクローズアップする「HSインタビュー」第2回目のゲストは、ヒラタワークス株式会社代表取締役、株式会社サニーサイドアップキャリア代表取締役の平田 静子さんです。

フジサンケイグループ初の女性役員
平田さんは、「女子25歳定年制」がまだ存在していた1969年に株式会社フジテレビジョンに入社。25歳できっちり辞めるつもりで、地味にコピーを取り、お茶汲みをし、伝票を整理する日々を過ごされていました。しかし、25歳の目前に同制度が撤廃されます。退職せずひたすら目の前の仕事に打ち込みながら、35歳のとき、フジサンケイグループ傘下の出版社である株式会社扶桑社へ出向。特段の野心も出世欲もなかったものの、42歳のときに、突如、出版業の未経験ながら編集長を命ぜられます。

素人の編集長ということで、最初は味方も少なくご苦労されたそうですが、持ち前の好奇心と行動力を武器に、2000年には累計400万部の大ヒット作となった『チーズはどこへ消えた?』を手掛けるなど、数々のベストセラーを世に生み出されました。そして、同年、フジサンケイグループ初となる女性役員に就任されます。

現在は、60歳の定年退職を機に「これからの人生は、これまで大勢の方にいただいたことを人や世の中へお返ししよう」との思いで設立されたヒラタワークス株式会社で、出版・映像・イベント・マーケティングなどのプロデュースに携わるほか、2016年より人材紹介業の株式会社サニーサイドアップキャリアの代表取締役として活躍されています。

常にハッピーで生き生きとされている平田さん。素晴らしいご経歴もさることながら、その考え方や物事の捉え方に幸せに生きるヒントがあるのではないかと思い、インタビューをお願いしました。

写真用の名前を入れますブリックカラーのドレスが素敵な平田さん

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HS: ご経歴をお伺いすると、女性の社会進出が世間であまり認められていない頃からキャリアを形成されたバリバリのビジネスウーマン!という印象を受けがちですが、実際にお会いすると、本当に自然体で、常に生き生きと楽しそうにされているのがとても印象的です。

初対面の際、こちらが受け入れられていると感じられる温かいお心遣いや、相手の年齢や肩書きなどに関係なく接される公平さを、大勢の会食の席での短い会話の中でも感じられて、お話ししているだけでとても嬉しい気持ちになったことを覚えています。

平田さんがビジネス、プライベートの場を問わず、人と会うとき、お話しされるときに気をつけていらっしゃることはございますか?

平田さん: そうですね、先ず、決めつけないことです。例えば、「こういう肩書きだから、こういう見た目だから、こういう話はやめよう」とか。もちろん、礼儀作法やマナーは必要ですが、それ以外は、自分に対しても「こうあらねば」と決めつけないようにしています。

また、もともと好奇心が強いので、その人が何をやっているのか知りたい!という気持ちで、次々と質問します。目の前に相手が存在し会話をする「今、その瞬間」を大切にし、楽しい時間にすることをいつも心掛けています。人と話をすることで、どんなことでも気付きがあります。だから楽しい。ときどき、目の前にいて受け答えはしているのに、心はそこに居ない人がいますよね?私は、「いつもここに居るよ」ということを心掛けています。

HS: なるほど!平田さんが仰ることは、シンプルかつ当たり前のことではあるのですが、この心構えを常に徹底して実行できている人は、意外に多くはないのではないかと思います。私自身、お話を楽しみたい一方で、やらなければいけないことなどが頭をよぎり、上の空になってしまうことがしょっちゅうあるので・・・(笑)。猛省です。

今回のインタビューに先立ち、平田さんが以前に書かれたご著書『そういえば、いつも目の前のことだけやってきた』を拝読しました。ご著書自体、平田さんの人間性が表れていて、前向きに頑張ろうと思えるパワーを与えてくれるのと同時に、これまでのご経験のエピソードの中から窺える対人コミュニケーションや幸せになる心の在り方など、本質的な気付きが多く、女性だけでなく、ビジネスマンにも参考になるお話が多いように感じました。

例えば、平田さんは、ご著書の中で、「人が喜んでくれることが、何より嬉しい」とご自身の喜びの軸を見つけたとありました。フジテレビにご入社後、職場の上司にお茶を淹れるのに、濃いお茶が好きな方、熱いお茶が好きな方と、それぞれの好みに合わせて毎日お茶を淹れていたというエピソードがあります。純粋に人に喜んでもらえるのが嬉しくて続けられていたとのことですが、そこにとても女性らしさを感じると同時に、これこそが、相手の立場で徹底して考えられる平田さんの一番の強みなのかもしれないなと感じました。

でも、簡単でシンプルなことこそ、安定して継続することは、本当に難しい。人には、いろんな感情があるし、相手の心に余裕がないこともあれば、自分がそういうときもある。どんなときでも、気持ちがブレることなく、相手の立場に立って積み上げることができるのは、どのような心構えからなのでしょうか?

平田さん:
 それは、多くの課題がそれで解決するからだと思いますね。プライベートはもちろんのこと、ビジネスの場でも、「私がこの社長だったら、どうしたいか」とか、部下に対しても、「私が部長だったら、こうして欲しいだろうな」とか想像することが多いですね。
やはり、純粋に人が喜んだり、幸せを感じているのを見ると、私自身も幸せに感じます。見返りは別に期待しないし、自分がこうしてもらったら嬉しいからと言って、相手にそれを求めるというのもないですね。

写真用の名前を入れますブリックカラーのドレスに002 Ocra Rossa(ベージュ)のThe Soft Pumpをお選びいただきました


HS: ビジネスもプライベートも、全ては、人と人とのコミュニケーションの積み重ねから成り立つわけですが、誰だって自分ごとで考えてくれる人と触れ合うことは嬉しいはず。これを、様々な形で実践され、愚直に積み上げられてきたからこそ、平田さんに人間力の高さを感じるのだと思います。

平田さんは常に明るく、ポジティブで、良い意味での自己愛や、自信を感じさせられます。なかなか自信が持てなかったり、自信が持てなくて前に出られないという女性は、割に多いと思いますが、昔から平田さんは今のような感じだったのですか?

平田さん: 
いや、実は、昔から自信がなくて、自己肯定感も低かったんです。いつの時代も自己肯定感の低さが顔をもたげてきたというか・・・。

HS: えっ!?意外です!実は、私も自己肯定感がかなり低くて、それが仕事でもプライベートでも邪魔をすることが多く、悩みの種でもあるのですが、平田さんはどのようにそれをコントロールされているのですか?

平田さん: 私は、常に立場を取ることを大切にしてきました。責任のある仕事を任されたとき、「私にはやれないかも・・・」という気持ちがむくむくと湧く一方で、立場があると、それをやり切る責任が生まれる。立場を取って、責任を果たすことで自己肯定感の低さをカバーしてきたように思います。で、実際にそれが達成できると、自分の自信につながる。それによって、責任を果たす立場をさらに強くしていく。それの繰り返しだったように思います。

これでいいやと思ったら、そこで終わり。自分を叱咤激励しないと!ある意味、自己肯定感の低さは自分に満足していないということ。だから、余計に伸びていくんじゃないかなって思います。

HS: 確かに!自己肯定感の低さと向上心は表裏一体ですね。成長したいという意欲は、ある意味、自己肯定感の低さから湧いてくるもの。その点では、ときにしんどいですが、大切にすべき気持ちなのかもしれませんね。

写真用の名前を入れます「シンプルなファッションが好きですね。デコラティブなものや柄ものはあまり着ません。パターンがシンプルなものに、差し色を入れたり、色が美しいものを着ます。」


HS: 新型コロナウイルス感染症の拡大により、世の中が大きく変わろうとしています。自粛期間中に感じられたこと、また、今後、世の中や人々の価値観はどう変わっていくと思われますか?

平田さん: 自粛期間中に独りでいる時間が多かったのですが、実は、これがものすごくありがたかった。これまで日々忙しく過ごす中で、とにかく目の前の事象に対応していた時間が圧倒的に多かったんですね。例えば、仕事だろうがプライベートだろうが、日々会食で話をするのは楽しい、気付きもある。ただ、その膨大なインプット情報を整理し、咀嚼する時間が全然取れていなかったことに気づきました。

自分はどういうことを本当にしたいのか、いつも何を考えているのか、自分に向き合い、考えを整理することができました。例えば、仕事でいうと、60歳を過ぎて、今までいただいてきたものを社会や人にお返しする余生にすると決めたのですが、もうすぐ72歳になる今、決めたことがやれていたかをじっくり見直し、お返しできることを具体的に整理しました。

例えば、私の強みは、出版に関するアドバイス、プロデュースなので、その分野はより強くしていこうと思っています。また、世の中には、フリーのライターや編集、クリエイターがたくさんいますが、自分の持つ人脈を活用して、その方々をコーディネートしたり、マッチングさせることで、人や世の中にお返しできるのではないかと思っています。

講演会もたくさん受けてきましたが、自分のキャリアに関するたったひとつのテーマでしか話していませんでした。ただ、自分のこれまでの経験をお返しすることを考えると、もっと様々な切り口が考えられると思います。例えば、長い間、たくさんの本を作り、多くの素晴らしい方、成功されている方に会ってきましたが、成功される方々に共通する点をお話しするとか、不可能と言われていた出版を可能にした経験もありますが、そこから得た気付きや学びを共有させていただいたりとか・・・。

世の中の変化という点では、今回のパンデミックにより、世界中が同じ悩みを共有するようになり、皆が同じ利害関係となりました。各国、国外からの流入を止めて、自国を守ろうとしましたが、それは、必ずしも利己的なものだけでなく、まず自国の安全を確保することが他国を助けることができるという考えもあるのではないでしょうか。個人においても同様で、自分を守ることが他人を守ることにつながる、互助の気持ちが強くなると感じています。利己から利他へつながり、地域社会へもつながる「三方よし」の世の中になるんじゃないかしら。希望的観測からも、そう願いたいですね。

 

後編を読む―――――――――――――――――――――――

【プロフィール】
平田 静子
明治大学短期大学を卒業後、1969年に株式会社フジテレビジョンに入社。84年に株式会社扶桑社に出向し、宣伝部を経て書籍編集部の編集長となり、『アメリカインディアンの教え』など数々のベストセラーを生み出す。2000年には累計400万部の大ヒット作となった『チーズはどこへ消えた?』を手掛けた。その後、執行役員、取締役、常務取締役などを歴任。2010年3月に退職後、自らの会社、ヒラタワークス株式会社を設立し、出版・映像・イベント・マーケティングなどのプロデュースに携わっている。2016年7月より株式会社サニーサイドアップキャリアの代表取締役を兼任。2020年4月に母校である明治大学の最高意思決定機関である評議員会を構成する評議員に就任。著書に『そういえば、いつも目の前のことだけやってきた』(マガジンハウス)がある。

 

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