HS Brand Story vol.2: プロローグ〜後半

(『HS Brand Story vol.1: プロローグ〜前半』を読む)

迷走・・・
みんなで目指したのは、パンプスの女性らしいエレガンスさを保ちながら、スニーカーの快適さを持つ、パンプスとスニーカーの間に位置するもの。ただ、これが簡単そうで、想像以上に難しかったのです。

どうやったら、足にしっかりフィットするものができるか。スニーカーのような履き心地で、ヒールがあり、一方で、甲の美しい開きもあり、パンツでもスカートでも合わせやすいもの・・・。快適さやホールド感を与えるためにスニーカーのパーツを取り入れてみたり、サイズがぴったり合うようにデジタルを活用したサイズ計測、カスタマイズ、3Dプリンターなども検討したりと、あれこれ試行錯誤しました。ただ、あまりにも色々考え過ぎた結果、後で考えれば、迷走していたように思います。もちろん、迷走してしまったのは、リーダーであった私の責任に他なりませんが・・・。

また、何にでも合わせられるシンプルで美しいものを作りたかったので、シルエットをとても重視していたのですが、試作品を何度作っていただいても、なかなか納得のいくものは出来上がりませんでした。

イタリアの靴は何故か美しい・・・
当時、靴業界のことを右も左も分からない私たちは、業界に古くから従事する先輩方から多くを教わりました。その中で、イタリアのものづくりに対する職人さんの強いパッションや革の美しさ、同じ木型を使っても、イタリアで作られるシューズは何故か美しいという話を度々聞く機会がありました。まるで「フランスで食べるフランスパンは格別に美味しい」という逸話に似ていますが、私の「Why?」に対し、イタリア人の明るく情熱的に仕事に向き合う姿勢と、職人さんの社会的地位の高さがそれを生み出しているのではないかと、その方は分析されていました。

当時、その理由は不確かなものの、私自身、イタリア製のシューズは好きでよく履いていましたから、その美しさについては、十分理解をしていました。

製品化まで到達することなく断念へ
結局、開発を始めて2年近くが経っても納得の行くものはできず、様々な事情の中で、製品として世に送り出すことができないまま、断念することになりました。挑戦を途中で諦めることはとても悲しく、また悔しくもありましたが、一方で、「もう靴を見るのはしんどい・・・」と思うくらい気持ちも折れてしまっていました。先ずは一度ここから離れなければ、自分を立て直せないとも感じていたと思います。

断念した後は、がっつり落ち込んでしまい、長い間靴のことは考えられなかったですし、そのときは自分がまた靴の開発をチャレンジするだなんて、正直、夢にも思いませんでした。しかしながら、靴から完全に離れた生活を過ごし、客観視できるようになり始めると、「あの時、迷っていたあのポイントは今だったらこうするな・・・」と、ふっとアイディアが浮かぶことが次第に増え、気がつけば、「もう一度チャレンジするんだったら、こうするかな・・・」という方向感が完全に出来上がっていました。

失敗の価値
この経験は私に失敗することの価値を強く教えてくれました。もちろん、失敗には恥ずかしさもありますし、精神的にも(事業においては経済的にも)それなりのダメージを受けますので、正直、かなり辛い時期はありました(笑)。でも、間違いなく、それは今の私をつくる糧となってくれたことを実感します。

失敗を恐れ、バッターボックスに立たないことこそが、何よりもの損失であると、私は信じています。

昔のプロジェクトの仲間たちと

(『HS Brand Story vol.3:運命的な出逢い』につづく)